世界各地で、消滅している

 世界にある言語数は6000種類と言っても、中国語や英語やスペイン語のように億単位の人々に母語として用いられている多数者言語もあれば、10人以下の話者しかいない「少数者言語」もあります。以下、「少数者言語」と言う時は、「少数の人が使っている言語」の意味で用いていきます。ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の調査によると、10人以下の話者しかいない言語は、なんと199もあるのです!

 こんなふうに、話者数が言語によって、大きく異なっています。母語話者数の多い順に言語を並べて1位から20位まで行くと、もう世界人口約80億人の半数近くである35億人を占めてしまいます。つまり、地球上に住む人間の半数近くの35億人は、たった20種類の言語で賄(まかな)われていることが分かります。残りの45億人の人々が、5980種類の多様な言語を話しているわけです。今、消滅の危機に見舞われているのは、この話者数の少ない言語です。

日本語話者数の世界ランク

 すると、日本語のことが気になりますね。日本語は、母語話者数から見ると、世界の言語の中でどのくらいの位置にいるのでしょうか?第9位です。1位は中国語で、母語話者数はおよそ8億8500万人、2位が英語で4億人、3位がスペイン語で3億3200万人、4位がヒンディー語で2億3600万人、5位がアラビア語で2億人、6位がポルトガル語で1億7500万人、7位がロシア語で1億7000万人、8位がベンガル語で1億6800万人。

 そして、9位が日本語で1億2500万人です。日本の人口が、日本語の母語話者数になっているのです。ちなみに、10位はドイツ語で1億人です。こうして、20位までの母語話者数を合計していくと、世界人口の半数近い34億9200万人になります。

 このデータを知ると、日本語は、母語話者数が第9位だから、滅びることなんてないんじゃないと、胸をなでおろす方がいらっしゃるに違いありません。確かに、母語話者数から見ると、滅びる危険性の少ない言語の一つです。

 でも、言語の消滅の原因は、母語話者数のみにあるわけではありません。日本語は、英語やスペイン語などの世界共通語にはない消滅しやすさを抱えています。英語やスペイン語などは、発祥の地であるイギリスやスペイン以外の土地でも話されています。さらに、英語やスペイン語は、第二外国語として世界中で学ばれています。

 ところが、日本語は日本以外の国で話されることはありません。第二外国語として学ばれることも多くはありません。日本語は日本でしか話されていない孤立言語です。

 ちなみに、第二言語として学んでいる話者数を加えて世界の言語の使用状況をとらえると、英語が第1位の座につきます。さすがに世界共通語の貫禄(かんろく)です。合計13億5000万近くの人に使われています。こうした第二言語の話者数も加えて順位を並べなおすと、日本語は13位に下がります。