しかも、日本語の母語話者である日本人の人口は、現在減り続けています。さらに、日本は始終災害に見舞われています。日本列島が壊滅的な被害を受けて、日本人が極端に少なくなったら?そのうえ、心配なのは、英語さえできればいいと思っている人が増えていることです。
日本人は、自分たちの精神的支柱となっている日本語を、世界共通語となった英語から守りきることができるのでしょうか?日本語も、決して安全ではないのです。
どんな言語が危機に
さしあたり、言語消滅の波に襲われているのは、少数者言語です。ユネスコでは、消滅の危機にさらされている言語を2500種類ほど列挙しています。こうした危機言語がクローズアップされたのは、1991年7月のアメリカ言語学会大会でした。
それから30年。日に日に少数者言語は、消滅しています。
「世界のどこかで、2週間に1人のペースで、衰退しつつある言語の最後の話者が死んでいる」と、言語学者のニコラス・エヴァンズさんは発言しています。2週間に一つ、ある民族の使っていた言語が消滅しているのです。永久にこの地球上から消えているのです。
では、どんな地域のどんな言語が消滅の危機にさらされているのでしょうか?世界を次の(1)から(8)までの八つの地域に分けて、その様相を大きくつかんでおくことにします。
(1)東アジアおよび東南アジア、(2)オーストラリアおよび太平洋地域、(3)南アジア、(4)東ヨーロッパおよび中央アジア、(5)西ヨーロッパ、(6)中東および北アフリカ、(7)サハラ以南のアフリカ、(8)南北アメリカ。
図2をご覧ください。日本を起点にして、ほぼ西に向かって進んでいくという順序です。では、まず、(1)東アジアおよび東南アジアから。この地域にある日本にまずは注目。
日本の消滅危機言語
ユネスコの調査では、日本で消滅の危機にある言語は「八つ」と指摘されています。「えっ」と驚く方もいらっしゃるでしょう。そこに記されている言語とは、次のものです。
アイヌ語、奄美語、八丈語、国頭語、宮古語、沖縄語、八重山語、与那国語。
奄美語、国頭語、宮古語、沖縄語、八重山語、与那国語は、すでにお話ししたように、日本語の中の「琉球方言」と考えるのが普通です。また、八丈語も、日本語の中の「八丈島方言」です。「方言」だとしても、消滅の危機を迎えていることは間違いありません。
日本全国の方言は、50年くらい前から消滅の危機が叫ばれていました。1999年には、「基本的な部分は共通語で固められた上に、感情表出に関わる単語や終助詞などに方言的要素を散(ママ)りばめるといった程度のものが、今や方言的な会話の実態」と言われています。
方言は、国家という概念ができると、減少する傾向があります。ゆっくりと国家の標準的な言語形態に向かって方言が変化し、消滅していってしまうからです。
方言の消滅に続くのは、より高いレベルの国家語です。つまり「日本語」の消滅です。「日本語」の消滅の恐れさえ、抱かなくてはならない状況になってきたのです。消滅の波は、「方言」から国家レベルの「日本語」にまで、ひたひたひたと音もなく、おしよせてきています。
日本語の将来を守るには
日本語が世界第9位の話者数を誇っているのは、実は、欧米列強が東アジアや東南アジア、そして太平洋地域の島々の植民地化に乗り出した時、日本とタイだけは、民族国家の形をとった独立国だったため、植民地化を免れたという過去の僥倖(ぎょうこう)に負うているわけです。
にもかかわらず、日本は、自ら進んで、小学校の低学年からの英語教育に乗り出しました。よほどの覚悟を持って日本語の将来を守らなければ、いつの間にか英語の国になっている可能性もあります。
言語学者のK・デイヴィッド・ハリソンさんは重い口調で言います、「その言語を用いる人々が国際言語を採り入れはじめると同時に(その言語は)消えていく」と。









