望まれるのは、女性自身がつくる「新しい管理職像」
女性の管理職やリーダーが組織で育つためには、「女性のキャリア意識を高めることが重要」とも野村さんは説く。「意識を高める」ためには、他者による外的な力(支援)と自己による内的な力(意識変化)が必要だろう。
野村 「荷が重い」かもしれませんが、女性には「新しい管理職像」をつくっていくことが望まれます。「私は残業をいっさいせずに管理職をやります!」といったふうに。「マネジメントは無理です」と女性が言う理由には、仕事の経験不足による不安やアンコンシャスバイアスもあります。成功体験を積むことができずに、自信が持てないでいる。「あなたならできるよ」「私もフォローするから、とにかくやってごらん」と、上司から何回も背中を押されて管理職への昇進をようやく受け入れる女性もいます。世界的に有名な企業で社内公募ポストに応募してくる男女を比較したところ、「女性は自分が要件を100%満たしていると思うときに手を挙げるが、男性は60%くらいで手を挙げる」という結果が出ました。経営層や上司である男性管理職は、「60%の力しかないと思っている女性」に自信をつけてあげることが大切です。
現在(2023年8月)、野村さんは東京家政学院大学(*10)の特任教授として、社会に出ていく女子学生を対象に講義を行っている。コロナ禍に入学して、家政学に向き合っているZ世代の学生たちは、どのような就労観を持っているのだろう。
*10 東京家政学院大学 1923年創立。東京都千代田区三番町と町田市相原町にキャンパスがある。創設者は大江スミ。「知識Knowledge)の啓発」「徳性(Virtue)の涵養」「技能(Art)の錬磨」を建学の精神としている。
野村 講義では、戦後の高度成長期に性別役割分業が確立し、その後に女性運動が起きて、男女雇用機会均等法ができ、1985年からの30年間で非正規雇用が約3倍になって……という話をします。最後に、「正社員として働き続ける人と、子育てのためにいったん退職してパートで復職する人とは生涯の収入で約2億円の差があります」と伝えると、多くの学生が驚きますね。
また、「皆さんは『働くこと』をどう考えていますか? 希望のライフコースは?」と必ず尋ねています。回答として、1:結婚、出産しても仕事を続ける/一生働き続ける 2:出産後は仕事を辞め、子どもが大きくなったら仕事に復帰する 3:結婚もしくは出産後は専業主婦になる、とあって、講義を聴く前と後で何番かをそれぞれ提出してもらうのですが、最初から「1」の学生もいる一方、「2」「3」が「1」に変わる学生も目立ちます。