2013年の尖閣諸島問題当時を思い出させるレベル
「一番反対しているのは日本自身」の声も

 こうした日本を批判する動きはだんだんとエスカレートし、ついには中国から福島県などに嫌がらせの電話が殺到したり、現地の日本人学校が石や卵を投げられたりといった事態になっている。上海に住む筆者の日本人の友人は、「ついに日本領事館から連絡がきた。外出する際には、不必要に日本語を大きな声で話さないこと、行動を慎重にしてくださいと言われた。なんだか、2013年の尖閣諸島問題の時のような雰囲気になっているね」と困惑した様子だった。

 中国のSNSの異様な盛り上がりは、止む気配がない。8月26日に大阪で急な暴風雨があったことや、25日の朝に三陸沖でマグニチュード5程度の地震が起こったことなど、もはや何でもかんでも処理水の放出に結び付け、「天が怒っているのだ、早くも因果応報だ」という投稿がされている。

 このように日本を批判する声があふれる中で、「科学的な根拠に基づいて、冷静に対応しましょう!」との呼びかけや、「反対しているのは我が国だけだ」という投稿もたまに見かけるものの、すぐに反論の声に埋もれてしまう現状だ。

 上述の「ほかの国はみんな黙っているのに、中国だけが反対している」という見解に対し、上海在住の有名な元ジャーナリストが「まったくのナンセンスだ!一番反対しているのが、中国ではなく、日本自身ではないか」と反撃した。

 そう言われるのも無理がない。なぜなら、首相官邸の前で開かれた反対集会や、野党と地元の労働組合主導で8月27日にいわき市で行われた抗議集会などの動画が、中国では大量に流れているからだ。いずれも数百人規模とそれほど大きな集会ではないのだが、動画ではそれは分からない。映像の中で、参加者たちは「東電による海洋放出反対!汚染水の海洋投棄をストップ!」と書かれたプラカードや横断幕を掲げている。参加者の女性の一人が、「国が国民と契約したものを勝手に廃棄するような行為を絶対許せないし、それは国民だけではなくて、世界中の皆さんへの裏切り行為だと私は思っていますので、絶対に反対する」と語るのが中国語に翻訳され、字幕付きの動画になっている。

 日本は民主国家であり、政府に対しての抗議やデモが許されていて、自由に発言できる。しかし、ほとんどの中国の国民はそれを知らずにいる。こうした動画を見れば、「日本人全員が反対している」と読み取ってしまうのだ。