「仕事以外の時間は買い物」だったはずが……
団体で日本に来た中国人の行動が変わった
折しも、中国政府は、8月10日に日本や韓国など78カ国への団体旅行を解禁した。日本のメディアの報道を見ると、百貨店やホテル業界など、インバウンドが増え、また“爆買い”が復活するのではないかと期待が高まっている様子がうかがえる。しかし、本当に中国から団体旅行者が大勢やってくるのか、コロナ前のように爆買いが復活するのか? 筆者は、その期待は裏切られる可能性がきわめて高いと考えている。
最近、何回か、中国の各地からの参加者で構成された来日ビジネス視察団体と一緒に仕事をした。参加者は、デベロッパーやIT関連、医療介護などの企業幹部や社員たちで、20~40代までと比較的若い人がほとんどだった。こうした団体の参加者たちは、コロナ前には皆、仕事以外の時間を目いっぱい買い物に使い、お土産リストを手に、買い物に没頭していた。「日本は閉店時間が早すぎる。中国なら夜の11時とか0時まで開いているのが普通なのに」と文句を言われたことも度々あった。しかし、今回は明らかに様子が違う。みな夕食が終わるとさっさとホテルに戻り、部屋やロビーでスマホをいじって過ごしている。
「買い物はしないのですか?」と尋ねると、「普段から中国でよくECを利用しているから。もう何でもECで手に入るよ」と答え、苦笑しながら「今は懐が寒い」と付け加えた。
その後、この団体を引率した人とお茶をする機会があったのでこの話をしてみると、「今は若者の行動が非常に慎重になっている。今回のメンバーは優秀な人ばかりだが、それでも、いつクビになるのかと将来に対して不安を抱えている。大学を出ても仕事が見つけられないし、すでに働いている人達も就職や再就職の競争が熾烈(https://diamond.jp/articles/-/325165)。こんな状況だから、みんなお金を使うことを躊躇(ちゅうちょ)しているんだ」と声を潜めて話していた。