いつだって薄着な2人
理由は各々あるけれど

「ひゃー!風が冷たい」

 ドンマちゃんと歯科医院で偶然会って、お互いの「感覚」について打ち明けあった日から半年が経った。

 似た者同士的な親近感を彼女にもったけれど、あの日以来、2人だけで話す機会もなかった。

 朝晩の空気の冷たさが身に染みる。

 道ゆく人は、コートにダウンジャケットにマフラーに……と完全防寒スタイルだ。

 僕はというと、春の姿と変わりなくブレザーの制服のみ。

 寒いからといってたくさん着込むということはないし、学校指定のコートも買ってはあるけど一度も着たことはない。

 毛糸のセーターやマフラー、手袋、フリース、重い上着など、冬用のあたたかいアイテムが苦手なのだ。

 僕は私服のときも、春夏秋冬、だいたい同じようなかっこうをしている。

 着られる服が極端に少ないのでたいてい同じになってしまうということもあるし、「寒さ」と「服の不快さ」を天秤にかけたら、圧倒的に「服を着る不快さ」のほうが大きいからだ。

 痛かったり、気持ち悪かったりするものを身につけるよりは、寒いほうがはるかにマシ。

 だから、家では真冬でもランニングシャツにボクサーパンツ、裸足で過ごすことが多い。真夏の海辺にいる少年のような姿だ。

 たまに親に「手が紫色になってるよ」と言われて、「あ、あたためなきゃ」と思ったりはする。

 ちなみに僕は、真夏の外出は長袖だ。

「夏に長袖!?」と言われることもあるけれど、半袖シャツの袖の部分が腕に触れる感覚が苦手だし、電車の中で誰かと肌が触れ合うのも耐えられないから。

 薄手の長袖シャツではなく、実は冬と同じけっこう厚手のパーカーを着ている。

 家の中では下着姿で過ごす僕は、冬は「見てるだけで寒い」と言われ、外出時は季節関係なく厚手のパーカーを着るので、夏には「見ているだけで暑い」と言われる。

 季節感がバグった矛盾した服装をしているけれど、自分の快適さは自分で選びたいんだ。寒さに震えながら校門に向かう道を歩いていると、コート軍団の中に一人、ワイシャツにスカートという季節外れな薄着で歩いている女子がいた。

 ドンマちゃんだ。

 そうか、ドンマちゃん、痛みと同じく「寒さ」も感じにくいって言ってたな。