ベンチャーを立ち上げるなら、東京や大阪などの大都市が必須条件とされるが本当にそうだろうか。地元の長崎県で起業後、現在は年間取扱高308億円を誇る巨大ビジネスへ成長させた若き経営者が戦略を語る。本稿は、吉岡拓哉『25歳ではじめた長崎のベンチャー企業が世界で注目されるようになった理由』(幻冬舎メディアコンサルティング)の一部を抜粋・編集したものです。
「大都市での起業は成功する」は真実?
ビジネスモデルを鍛えることも重要
大学を出て3年間社会人生活を送った私は、学生時代の友人を誘って25歳のときに地元の長崎で起業しました。手元の資金は60万円。社員は私たち2人だけです。学生時代に取り組んで成功したイベント事業を改めて手掛けたのですが、まったくうまくいきませんでした。電気やガスを止められて真冬でも水のシャワーしかないという生活も経験しました。
しかし、さまざまな事業に挑戦しながら2人で切磋琢磨してセールスの腕を磨き、4年後にはついにこれだと確信できる新しいビジネスを見つけました。試行錯誤を重ねながらもビジネスモデルの改善を続け、大きく成長させることに成功、起業10年目の今、PINCH HITTER JAPANは従業員は81名に増えました。
長崎県を代表するベンチャー企業として「長崎県ネクストリーディング企業」に認定され、アジア太平洋地域に本社を置く100万社以上を対象にした「アジア太平洋急成長企業ランキング」で149位となり、小売部門では第5位にランクインしました。
新たなビジネスモデルの発見も、そのブラッシュアップも長崎という地方からの起業にこだわり、その道をひたすら進んできたからこそ実現できたのだと思います。起業は地元の長崎でする――初めからそう決めていました。
「いや、起業するなら東京でしょう。少なくとも大阪とか名古屋、福岡といった大都市でなければ無理だと思う」とアドバイスをくれる人は少なくありませんでした。理由は、大都市ならビジネスコンテストがたくさんあり、認められれば資金援助が受けられる、仮にコンテストがダメでも有力な投資家の目にとまるチャンスがある、働き手も多いから人集めもやりやすいというのです。
しかしそのアドバイスを受け入れることはありませんでした。そもそも私が不思議に思っていたのは「5億円の出資を受けました!」と、スタートアップ企業が出資を受けたことをプレスリリースなどで大きな成果と誇ることです。
資金調達自体を否定するつもりは全くありませんが、ビジネスを本格的に立ち上げる前に資金だけ手に入ることが本当に正しいのだろうか。仮に最初は苦労しても、ビジネスモデルをしっかりと鍛え上げるからこそ自力がつき、スタートアップが大きくスケールするのではないかと思います。