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「失敗しても、その後成功すればいい」。新規事業に取り組むにはそれぐらいの心構えが必要です。何もしないであれこれ検討していても成功はできません。本稿では、印刷ECサイトの創業メンバーで新規事業家である守屋実氏が、バブル時代に1億円稼いだ体験談を紹介します。

※本稿は、守屋 実『新規事業を必ず生み出す経営』(日本経営合理化協会出版局)の一部を抜粋・編集したものです。

バブル時代のパーティー屋が起業の原体験

 話は、私が19歳のとき、大学に入学して、先輩がつくった学生ベンチャーに参画させてもらったときから始めたい。

「昔話はあとにして、とにかく直ぐに事業開発のテクニックを教えてくれ!」と思う読者もいるかもしれないが、じつは、ここで述べることは、新規事業の成功に絶対に欠くことのできない「意志や姿勢」とは何かを中心に話している。

 というのも、新規事業には失敗がつきものだが、経営者や担当者が抱える多くの悩みや悪戦苦闘が、「企業経営では正しいが、新規事業では正しくない行動、思考パターン」に起因していることが多いからだ。新規事業と既存事業はまったく違うものであり、たとえるならば野球とサッカーくらい、方針や方法が異なる。

 しかし、新規事業の経験が少ない企業は、その違いがわからずに悩み、悪戦苦闘し、新規事業に注ぎ込む大切なカネや時間をムダにしてしまっている。

 したがって、まずは既存事業の枠組みにとらわれた「思考のクセ」や「姿勢」がいかに新規事業の成功を阻害するかを、より臨場感や手触り感をもって皆さんに理解・納得してもらうために、私がこれを身をもって体得したエピソードを、ストーリー仕立てで紹介しようと思う。

 時はバブル真っ盛り。いまの若者には想像がつかないかもしれないが、日経平均株価が当時のレートで3万8千円までいって、山手線の内側の土地を全部売ると、アメリカ全土が買えるような、ちょっと異常な時代であった。

 異常な時代だから、何をしてもうまくいった。2回連続で失敗したとしても、次に3連勝すればよくて、それができた時代である。なぜなら、全員が上りのエスカレーターに乗っていたからだ。要するに、黙って立っていても上にあがる時代だったのである。

 そのときに、たまたま運のめぐり合わせで、先輩がつくった学生ベンチャーに「お前も入れ」と入れてもらい、そこでいろいろな商売をするようになった。

 最初の商売は、いわゆるパーティー屋だ。当時は若者が夜な夜な集まる有名な大型ディスコがあり、そこを借りきって学生に卸す。たとえば、50万円で仕入れたディスコを学生のサークルに70万円で卸せば20万円の儲けが出る。これを春と秋のパーティーシーズンを中心に、多いときには1日に50ハコ(=店舗)くらい卸したこともあった。