面接の場を見直すことで、採用活動は成功する

 早期化・長期化が目立つ、新卒社員の採用市場で、企業経営層や採用担当者のマインドはどうあるべきか。人材難の時代を、企業はどのように生き抜いていけばよいのだろう。

谷出  現在(いま)でも「学生を採用してやっている」という姿勢の企業があります。だから、圧迫面接をしたり、面接後の学生への対応が遅れがちになったりする。学生の話では「○月□日までに合否を連絡します」と言っておきながら、その期日の数日後にメールが来たという事例もあります。しかし、働き手がますます減っていく時代では、企業が「学生を選ぶ」より、「学生に選ばれる」ようになります。選ばれるためには、企業からの然るべき情報発信が必要。よほどの人気企業でない限り、相手(企業)をよく知らないまま、内定を承諾することはあり得ません。発信のポイントは、「自社が求職者にどのようなメリットをもたらすか」という視点です。たとえば、「創業100年の会社です」と謳っても、求職者にとっては、創業100年のメリットが分からなければ、「歴史ある会社ですね……」で終わってしまう。「お客様からの長年の厚い信頼があり、新しいことにチャレンジするときは、私たちを応援してくれるたくさんの方がいます。そして、新しいチャレンジや事業展開には、あなたの力が必要です」といったメッセージこそ意味があるのです。「これから社会に出る学生にとって、自社の何がメリットになるのか」を伝えていきましょう。

 採用活動においては、学生の接点となる「面接」が、“企業のこれから”を左右する大きなポイントになるようだ。

谷出 多くの企業の採用活動は、「見極め」を目的にしています。だから、面接では、学生に対してやたらに質問する。質問に答えてもらえば、学生の情報が入ってくるので「選ぶ」ことができるからです。しかし、学生が面接の場で企業の情報を得ないと、学生は「選ぶ」ことができません。結果、内定が出ても、学生は承諾することに二の足を踏んでしまう。面接時に、学生が「この人たちと一緒に働きたい」「この面接官の考え方は素敵だな」「話をしてくれた仕事はおもしろそうだな」といった気づきを得ることが重要です。一昔前までは、「よい人生は、よい大学を出て、よい会社に入って、定年まで勤めあげて、退職金をもらって悠々自適に暮らす」というものでした。その価値観が前提で、会社は学生を選ぶ時代でした。しかし、時代は変わり、これまでの当たり前が当たり前でなくなったことを、企業経営層や採用担当者は理解したうえで、就活生に向き合うべきでしょう。