新型コロナ禍で業績が悪化したJR東日本の好待遇に影響が出ている。鉄道への集中から脱却する「脱・鉄道」路線を加速させている同社にとって、今後の人事・組織の在り方は鍵となる。特集『JR東日本 脱・鉄道への分岐点』(全5回)の最終回では、「40代管理職で年収1000万円超え」とされるJR東日本の待遇や昇進の実態に加え、課題も明らかにする。(ダイヤモンド編集部 梅野 悠)
年収が40万円もダウン
コロナ禍で安定揺らぐ
給与が40万円ダウン――。JR東日本の2023年3月時点の社員の平均年収は、新型コロナ禍前の19年3月時点の715万円に比べて40万円も減少した。
その理由が、コロナ禍による業績悪化だ。JR東日本は、23年3月期の営業損益が1406億円の黒字となり、3期ぶりの黒字を確保した。だが、利益水準はコロナ禍前の19年3月期に比べ、3割程度にとどまっている。業績低迷が待遇にも影を落としているのだ。
実際、長年安定した待遇を維持してきたJR東日本は、業績悪化を受け、同社のボーナスが19年度の6.09カ月分から、21年度には4.0カ月分まで減少。足元の22年度実績でも4.76カ月分とコロナ禍前の水準に戻っていない。
これまで、JR東日本をはじめとする鉄道会社は、インフラ企業としての堅実な業績を背景に社員の待遇も安定してきた。だが、鉄道事業が大打撃を受けたことで、待遇の「安定性」も揺らいでいる。
コロナ禍を受け、JR東日本は鉄道への集中から脱却する「脱・鉄道」路線を加速。急ピッチで不動産を柱とする非運輸事業のてこ入れを図っている(本特集#3『JR東日本が“脱・鉄道”へ不動産シフトを加速!「非鉄道事業を鉄道事業と同水準に」は実現可能か』参照)。
では、成長の原資ともいうべきJR東日本の社員への待遇の実態とは。次ページでは、JR東日本の社員の具体的な給与水準や人事制度について明らかにするほか、今後の成長に向けた課題も明らかにしていく。また、同じJRグループで最も給与が高いとされるJR東海の待遇とも比較する。