マイナ保険証の利用登録増加ともに
明らかになったトラブルの数々

 マイナ保険証は、マイナンバーカードの個人認証機能を使って、加入先の健康保険組合や自己負担割合などの資格情報を確認するというものだ。

 コロナ禍では、病院や診療所などの医療機関と保健所をつなぐネットワークの混乱ぶりが露呈したが、その原因のひとつが医療分野のICT化の立ち遅れだ。そのため、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)によって業務効率を引き上げ、安心・安全で質の高い医療を提供していくために、2021年10月から本格的にマイナ保険証が導入されることになった。

 ただし、当時はまだ、マイナンバーカードを持っている人は人口の半分以下で、マイナ保険証の登録率も低迷していた。

 デジタル庁の「マイナンバーカードの普及に関するダッシュボード」のデータテーブル(2023年9月8日更新)によると、2022年4月3日時点でのマイナンバーカードの累計交付枚数は約5489万枚で、人口に対する交付率は約43.3%。このうち、マイナ保険証の利用登録を行った人は約811万人で、カード取得者の14.8%しか登録を行っていなかった。

 そのため、2022年4月にマイナ保険証で行われた健康保険の資格確認件数は、約19万件しかなかった(厚生労働省保険局「マイナンバーカードと健康保険証の一体化について」)。

 だが、その後、マイナポイントの付与など、カード普及のための国を挙げたキャンペーンによって、マイナンバーカードの取得や健康保険証としての利用登録をする人が急増。2023年7月2日時点の累計交付枚数は約9309万枚(人口の約73.9%)で、6470万人(カード取得者の69.5%)がマイナ保険証を登録するに至っている。

 カードの普及に伴い、マイナ保険証による健康保険の資格確認件数も781万件(2023年7月)まで増加したが、同時に報告されるようになったのが冒頭のようなトラブルだ。

 マイナンバーカードを健康保険証として利用するための登録をしたときに、誤って他人の情報がひも付けされ、医療機関でマイナ保険証を使おうと思っても、資格情報の確認ができない事例が報告されるようになる。国の「マイナンバー情報総点検本部」の会議資料によると、マイナ保険証が本格導入された2021年10月から、2023年7月末までに判明した誤登録件数は8441件で、そのうち15件は他人に情報を閲覧された跡が残っていたという。

 このほかに、全国保険医団体連合会(保団連)の「マイナ保険証による医療現場のトラブル調査・最終集計(6月16日集計)」によると、調査に回答した65%の医療機関が何らかのトラブルを経験している。

 たとえば、カードを差し込んでも「無効・該当資格なし」とカードリーダーに表示されたり、マイナンバーカードやカードリーダーの不具合など、何らかの理由で情報を読み取ることができなかったりして、マイナ保険証で資格情報の確認ができないというトラブルだ。

 資格確認ができないため、無保険扱いとなり、いったん医療費の全額(10割)を請求された人もいるようだ。70歳以上の人は、間違った自己負担割合が登録されていたケースもあったという。