機械の操作方法が分からなかったり、本人確認のための顔認証ができなかったりする患者への対応で、事務の負担が増えている病院や診療所もある。国は、2024年秋をめどに、従来型の健康保険証を廃止することを予定しているが、医療現場からは存続を求める声も上がっている。
こうしたトラブルが起こることを想定せず、事前策を考えていなかった政府には猛省が求められる。だが、マイナ保険証を利用した人すべてがトラブルになっているわけではない。問題なく資格確認ができて、通常通りの自己負担で、必要な医療を受けられている人も多い。
なにより、健康保険証で受診するより、マイナ保険証を利用したほうが、医療費は安くなるのだから、使える人が使わないのはもったいない。
マイナ保険証のほうが健康保険証より
初診時は40円、再診時は20円安くなる
医療分野のデジタル化を推進するために、現在、オンラインで資格情報の確認や医療費の請求ができる体制を整えた医療機関に対しては、通常よりも高い診療報酬が支払われる措置が取られている。
その報酬が、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」と呼ばれるもので、2023年4月~12月までは、患者が支払う医療費にも次のような影響が出る。
その病気で初めて医療機関を受診したときの初診料は、マイナ保険証の場合は20円(3割負担で6円)、健康保険証の場合は60円(3割負担で18円)。再診時は、マイナ保険証を利用すると上乗せの加算はないが、健康保険証で受診した場合は20円(3割負担で6円)がプラスされる(加算されるのは、いずれも月1回)。
つまり、マイナ保険証を利用したほうが、健康保険証を利用するよりも、初診時は40円(3割負担で12円)、再診時は20円(3割負担で6円)安くなるというわけだ。
この加算が付くのは、次の3つの施設基準を満たしている医療機関だ。
(1)オンライン請求を行っている、または2023年12月31日までに、オンライン請求を開始することを国に届け出ている
(2)マイナ保険証のカードリーダー設置などオンライン資格確認を行う体制を整えている
(3)オンライン資格確認ができることを、院内の見やすい場所(受付など)やホームページ等に掲示している
この施設基準を満たしておらず、マイナ保険証による資格確認をできる体制が整っていない医療機関は、そもそも加算が付かない。実のところ、そうした医療機関を利用するのが、医療費は一番安い。だが、厚生労働省の「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」によると、2023年9月3日現在、病院の93.6%、診療所の81.5%が運用を開始している。
ほとんどの医療機関が3つの施設基準を満たしているため、従来の健康保険証を使うと医療費は高くなるケースのほうが多くなる。少しでも医療費を節約したいなら、マイナ保険証を利用したほうがお得になるのだ。
ただし、注意しなければならないのは、単にマイナ保険証で資格確認をしただけでは医療費は安くならないという点だ。