値上げが日常茶飯事になった今でも、20年前から「中華そば390円」の価格を守ってきたラーメン・中華チェーン「日高屋」。その創業者である神田正会長は、波乱万丈なラーメン人生の中で、経営の神様・稲盛和夫氏からあるアドバイスをもらう機会に恵まれたという。そのときに大反対された「意外なこと」とは?(イトモス研究所所長 小倉健一)
ラーメン1杯390円を死守する「日高屋」
創業者は4億円超を従業員へ還元
埼玉県大宮が発祥のラーメン・中華チェーン「日高屋」を創業したハイデイ日高の神田正会長ほどユニークな経営者は、最近ではいなくなってしまった。今年2月に創業50周年を迎え、「従業員への感謝の気持ち」として神田氏が保有する約20万株(約4億2000万円相当、23年4月時点)を従業員へ無償譲渡したことで驚いた人も多かったのではないだろうか。
株式の無償譲渡は、役員と正社員、一定の条件を満たしたパートやアルバイトを含む約1100人を対象として、勤続年数などに応じ1人当たり100~400株で行われた。さらに驚くべきことに、この従業員への株式の無償譲渡は2018年以来、2回目だという。
日高屋は、材料費や運送費などのコスト上昇によって、麺類や定食、ドリンク類など全メニューの約9割に当たる70品ほどを3月1日から、10~50円値上げすると発表した。その一方で、看板商品である中華そばの価格は、02年の日高屋1号店オープン以来守ってきたという390円(税込み)に据え置くと表明した。
シンボル商品の価格据え置きによって、来店数を増やす試みなのかもしれないが、チャーシューも乗ったラーメン1杯が390円では採算ラインに乗っているかどうか微妙なところである。
神田氏のラーメン人生は、平坦な道のりではなかった。そして、その道のりの中で神田氏は、「経営の神様」と称された稲盛和夫氏と巡り合っていた。経営に関するアドバイスをもらう機会に恵まれたのだが、そのとき大反対されたというのが意外なことだった。いったいどんな助言をもらったのか。