「出口」の議論では見えない
植田日銀の金融政策の重心
日本銀行は7月の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の長期金利目標の変動幅の上限を「目途」とし、ある程度の上限超えを容認する「運用柔軟化」を打ち出した。
市場やエコノミストの中には、「異次元緩和の終わりの始まり」として今後、緩和政策の修正、いわゆる出口戦略に向かうとの見方がある。
金融政策の議論では「出口」という言葉がよく使われる。定義ははっきりしないが、黒田東彦前総裁の下で始まり、今も続くマイナス金利政策や「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組み、いわゆる異次元金融緩和を終了あるいは修正するという意味合いで使われることが多い。
だが7月決定会合後の会見でも、植田和男総裁は、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、物価目標達成にはまだ大きな距離があると述べた。
異次元緩和の枠組みの変更に慎重なスタンスを続けてきたため、植田総裁は黒田前総裁の時からのデフレ脱却のための金融緩和を継続しているというイメージがある。
消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)が7月で16カ月連続、2%の物価目標を上回っている状況で、慎重姿勢を疑問視する声もなくはない。YCC柔軟化を機に出口政策への予想が出ているのはその裏返しなのかもしれない。
だが植田日銀の「次の一手」は別のところにあるようだ。