会社と従業員を対等な関係にしっかり戻していく

永田 自律的キャリア支援における全体像として、4つのステップがあるようですが、詳しく教えていただけますか?

内田 ステップ1は「自己理解」。キャリア研修を世代別に行っているのも、この「自己理解」を重視しているからです。自己理解のカギとなる「これまでに仕事を通して積み上げてきたもの」は世代によって異なるので、世代別の研修が効果的なのです。ステップ2は「社内の仕事/制度の理解」。ステップ1で自分のなかに何が積み上がっているのかを理解したら、次に、社内にどのようなチャンスがあり、自分がキャリアと紐づけて考えることが必要になってくるからです。ステップ3は「アクションプラン作成」。ステップ1、2で理解したことを受けて、2Wayコミュニケーションで上司と対話する、キャリア面談で専門アドバイザーに相談する、手挙げ式の研修のなかから必要なものを選択していく、などの具体的な行動を検討します。上司に対して、「こういう仕事にアサインしてほしい」と伝える必要性が出てくるかもしれません。ステップ4は、ステップ3のプランに基づいて実際に現場で実践していく段階です。

永田 ステップ4に「チャレンジ公募」とありますが……。

内田 「チャレンジ公募」は、会社全体を通じて会社側が必要とする仕事を公募し、従業員自ら手を挙げてチャレンジできる機会です。

永田 ステップ2の「社内の仕事/制度の理解」の観点で言うと、「2Wayコミュニケーション」の際に上司から部下に「あなたがそういう方向性を目指すなら、こういう仕事があるよ」といったような、仕事のアサインに関わる話もされるのでしょうか?

山崎 まずは、部下から上司に「こういう仕事をしてみたい」という希望を伝え、上司はその背景にある個人の考えを確認しながら会社側の期待も踏まえて擦り合わせていく、といったイメージです。部下の希望に合致する仕事が必ずあるとは言えませんから。「いま取り組んでいるこの仕事も、見方を変えればあなたの将来にこのように繋がっていくよ」などと、できるだけ部下が気づいていないところを上司がフォローすることが大切ですね。

永田 上司は、部下が当年度取り組む仕事と将来望むキャリアを結び付けて、仕事を意味づけるサポートをしていく、といったイメージでしょうか?

山崎 そうですね。2022年度から「2Wayコミュニケーション」に「キャリア」という文脈を意識的に入れていて、その根底には、目の前の仕事の意味づけよりも、「自分がこの社会をどう生き抜いていくのかということを、一人ひとりで考えてほしい」という思いがあります。そこを深めていくことが、結果的に、自分のためにも、会社のためにも、社会のためにもなります。また、これまで、「従業員のキャリアや育成の機会を会社側が提供している」と感じられる側面もありましたので、今回の施策全体を通じて、会社と従業員の関係が対等であることを改めて認識していく機会としていきたいと考えています。