【 実際の相談事例 】
 実は、以前お話ししていたTさんから、正式に交際を申し込まれたのです。
 でも、いざ交際するとなると、なぜか喜べませんでした。あんなに付き合いたいと思って頑張っていた相手なのに、です。
 もちろん、その場では「よろしくお願いします」と返事はしましたけど。
 突然のことで、びっくりして喜べなかったのかなと思い、その時は深く考えませんでしたが、それからデートをしても全然楽しめなくて……。
 なんというか、本当に急に、Tさんを気持ち悪く感じるようになってしまったのです。
 あんな素敵な人がわざわざ交際を申し込んでくれたのに、私みたいなモテない人間が「気持ち悪い」と思うなんて、失礼ですよね。
 やっぱり、おかしいですよね。なぜ、このようなことが起こってしまったのでしょうか。

 相談者Sさんは、婚活サイトに登録をしていました。そこで出会ったTさんという男性を好きになり、「この人と付き合いたい」と思うようになりました。
 その後、何度か連絡を取り合いデートを重ねるうちに、Tさんから正式に交際を申し込まれたのです。

 付き合いたいと思っていた相手から交際を申し込まれる……本来なら喜ばしいことではありますが、Sさんはなぜか喜べませんでした。
 それどころか、付き合った途端に、急にTさんを気持ち悪く感じるようになってしまったのです。

 そこで私は、「付き合う前と付き合ったあとで、Tさんの言葉や態度が変わったように感じますか? Tさんのどのようなところが、気持ち悪いと感じましたか?」と質問をしました。

 すると、Sさんは首を横に振って、次のように答えました。

「それが、Tさんは何も変わっていないんです。正直なところ、Tさんの何が気持ち悪いのかも分かりません。何かされたから気持ち悪いとか、何かに幻滅しただとか、そういうこともないのです。……でも、これでよかったのかもしれません。取りえもなく、見た目も悪い自分のことを好きになるなんて、おかしいですから。付き合い続けても、どうせすぐに振られてしまうと思います」

 Sさんの場合は、低すぎる自己肯定感が心の変化に影響を及ぼしていました。
 Tさんを素敵だと感じて付き合いたいと願う一方で、Tさんとは釣り合わないダメな自分像に苦しんでいたのです。

それを見て
あなたはどう思いますか?

 突然ですが、あなたの目の前に、汚れた長靴があったとします。
 ボロボロで汚く、靴底には穴もあいていて、とても履けるような状態ではありません。

 この長靴を見て、「素晴らしい! 価値がある!」と絶賛する人がいたら、あなたはどう感じるでしょうか?