「店員を怒鳴るクレーマーにモヤモヤ…」→芥川賞作家の回答に心がふっと軽くなった写真はイメージです Photo:PIXTA

愛について、自己肯定感について、人間関係について、病気について……その悩みは本当にあなたに必要なのか? 視点が反転するような驚きの回答が悩みをスッキリさせてくれる、異端文学者の独特人生相談。本稿は、山下澄人『おれに聞くの?』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。なお、ほかの質問は、フォロワー・知り合いから気軽に匿名メッセージ・質問を受信できるコミュニケーションサービス「Mond」からもご覧いただけます。

働きたくないし
自由になりたい!

Q――私は今、愛に満ちた生活を送っています。それ以外の現実のつながりがどうでもよくなって、気晴らしに友達としゃべりたいとも思わないし、実際そういうのはうまくいかなくなってきて、まえよりずっと深く考えることができている気がして今はうれしいです。

 しかし2年前に大学院を卒業してフリーターをやっているのですが、一緒にくらしている相手や、実家で心配している家族を考えると、もう私は就職せざるをえない状況になりました。しかし私は考えたり書いたりすることだけをやっていたいんです。

 社会と同化する自己を保持しておくことが、重要な緊張感を生むのだという考えかたも、私には信用できません。

 労働と戦争というのは、とても構造が似ている、加担者にはなりたくない、労働がなくなったあとの世界の人たちは、労働なんてあほらしいと笑っている、と思います。私は本当に働きたくないし働いて毎日長時間型にはまった思考をするのが嫌だし自由になりたい。

 でも私はたぶん働くでしょう。エントリーシートももう出してしまった。でも私はぜんぜんそんなことはしたくない。

A わたしは商業高校卒で卒業する頃ちょうどバブルの時代で学校始まって以来の求人数でした。でもわたしは就職する気はありませんでしたから、かといって何かやりたかったわけでもなく、就職活動にまったく参加せずぼんやりしていたら教師に呼び出されて「こんな恵まれた年はない、行きたいところへ行ける、なのにどこへも行く気がないなんてどうかしてる、将来を棒に振るのか、どこか決めろ」と延々と説教されたりしましたが従わず、卒業生で一人だけ行く先を決めないまま学校を出ました。

 それからは適当にアルバイトしたり、そのとき気の向いたことをしたり、親も早くに死んだりして、今も続く災害の時代をなんとなくうまくかいくぐり五十をすぎました。

 金なんか昔と同じ相変わらずないし今よりもっと歳をとって動くのにも支障が出たりするでしょう、売れない本をいつまでも出版社も出そうとはしないでしょう、生活できず路頭に迷うでしょう、また災害は起こるでしょう、それはまたそのときです、そしてそれはまだ死んでなくこの世界にいるのなら楽しみでもあります。

 少なくともここまでは大変楽しい日々でした。過ぎてみれば短いとかいう人はいますが長いです、長いことこそ幸運です、あれこれおありでしょうがどうかがんばってください。