だが、前出の坂本教授は警鐘を鳴らす。
「基本的に、それらの薬を処方している医師は糖尿病の専門医ではありません。学会のポリシーに反することは普通はやらない。営利目的の懸念があります。
何より気を付けなければいけないのは、副作用です。GLP-1受容体作動薬に関しては、便秘や吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸障害が現れることがあります。かつ食欲も落とす。稀に胆石症、胆嚢炎、胆管炎などが引き起こされる可能性もあります。
さらに、正常血糖の人が使用すれば低血糖となり、失神するケースもありますし、若い女性が痩せ過ぎると感染症にかかりやすくなったり、不妊になったりするリスクも高まります」
安全で効果が高い優れた薬ではあるが、やはり病気でも何でもない健常者が、安易に服用するリスクは高そうだ。ちなみに、坂本教授のような糖尿病専門医が患者さんに処方する場合には、身体的にも経済的にも継続しやすいよう、副作用も効果もマイルドで価格も安い、他の薬から始めるという。もちろん、食事指導、運動指導を行いながら、だ。
一方で、極端なダイエットによる健康被害の増加も懸念される。医師の目が行き届かないところで、ただ薬を飲むだけでぐんぐん痩せられるとなったら、際限なく痩せ続けてしまう人も出てくるだろう。それで万が一、栄養失調で重篤な事態に陥ったとしても、営利目的でオンライン処方しているような医師が、治療してくれたり、責任を取ってくれたりすることはありえない。糖尿病患者に、必要な薬が行き渡らないのも大問題だが、過剰なメディカルダイエットはもっと問題かもしれない。
本来、糖尿病治療には欠かせない薬
どうせ飲むなら40代から
とはいえ、GLP-1受容体作動薬もSGLT2阻害薬も、優れた薬であることは間違いない。
「問題があるとしたら、薬価の高さでしょうね。片方だけでなく、両方使うとさらにいい効果が望めることが最近分かって来たので、経済的に許す患者さんには、両方の使用をお勧めしています」(坂本教授)