このままでは本来必要とする2型糖尿病患者への供給が滞り、治療に支障が生じかねないとして、学会は「メディカルダイエット」や「医療ダイエット」「GLP-1ダイエット」を標榜して、ダイエット目的の健康な人たちに自由診療で糖尿病治療薬を処方している医師に対し「適応外使用を中止してほしい」と呼びかけている。
9割の国民が持つ「痩せたい」願望
過剰なメディカルダイエットの現実
だが、日本糖尿学会の呼びかけは、あまり功を奏さないかもしれない。国内の糖尿病有病者と糖尿病予備群は合わせて約2,000万人いるといわれているが(平成28年「国民健康・栄養調査」)、「ダイエットしたい」と考えている国民の割合は9割とも言われている他、20代~40代女性の 86.7%が ダイエット経験者で、うち 87.3%が ダイエット挫折者(2020年森下仁丹調査)という数字もある。美容目的だけでなく、健康のためにもダイエットしたいと思っている国民の数はとんでもなく多いはずだ。
需要があるから、供給される。
試しに、「メディカルダイエット」「GLP-1ダイエット」と入れて検索してみると、「医療機関が提供する医薬品や医療機器を用いたダイエット」「過度な運動や食事制限なく痩せられる」「継続しやすくリバウンドしづらい」「効果が緩やかなサプリメントと違って医薬品なので、効果効能が全然違う」「初診からオンラインで薬の処方が可能」など、魅力的な言葉が並ぶ。値段も、自由診療ながら月々数千円から2万円台と、エステやジムに通うより割安だ。
4月には、お笑いコンビ「かまいたち」の山内健司さんが糖尿病治療薬を使って10㎏のダイエットに成功したことをユーチューブで発信。驚きの痩身効果を紹介してバズった(現在は非公開)。
実は、筆者も昨年末、1万円でのメディカルダイエット体験を試してみた。都心のクリニックを訪れ、問診の後、腹部への注射と低周波マッサージ各1回、内服薬3日間で、即効2㎏の痩身に成功。嘔吐と食欲不振という副作用はあるものの、一カ月ぐらいなら我慢できそう。これで10㎏痩せるなら、飛びつく人は大勢いるだろうなと思った。