「未来」「個人の成長」「自己実現」志向が大切

 ここまで一括りでパラレルキャリアという言葉を使ってきました。広義のパラレルキャリアは副業も含む広い概念です。しかし、本文で私がお勧めするパラレルキャリアは広義のパラレルキャリアではありません。

 私は広義のパラレルキャリアを5つのタイプに分類しています。(1)本業改善型パラレルキャリア、(2)将来布石型(学び型)パラレルキャリア、(3)社会課題解決型パラレルキャリア、(4)趣味型パラレルキャリア、(5)小遣い稼ぎ型パラレルキャリアの5つです。(1)本業改善型パラレルキャリアは、例えば、経理のスペシャリストが、さらにスキルを磨くためにプロボノ(専門領域を活かしたボランティア)で社外活動するケースがあげられます。(2)将来布石型(学び型)パラレルキャリアは、数年後に企業内キャリアカウンセラーになりたいといった思いで社会人大学院のカウンセリングコースに通うケースが例としてあげられます。(3)社会課題解決型パラレルキャリアは、女性活躍のためのNPO法人を立ち上げ、活動を行うといった例があげられます。(4)趣味型パラレルキャリアは、例えば、銀行に勤務しながらミュージシャンとして活動するケースなどがあげられます。(5)小遣い稼ぎ型パラレルキャリアは、収入を補填するために、夜間にコンビニでアルバイトをするといったケースがあげられます。この「小遣い稼ぎ型パラレルキャリア」が、いわゆる一般的な副業に相当するものです。5つのタイプの中で、私が個人にも企業にもお勧めしたいパラレルキャリアは、(1)本業改善型パラレルキャリア、(2)将来布石型(学び型)パラレルキャリア、(3)社会課題解決型パラレルキャリアの3つです。

 多くの副業は「収入減」「現在の不安」などがきっかけとなり、視点が「現在」「対価」「個人」に向く傾向があります。一方、お勧めの3つのタイプのパラレルキャリアは「リスク管理」「スキルアップ」「社会課題」などがきっかけとなり、視点は「未来」「個人の成長」「自己実現」志向といえます。そして、これらは個人にとってメリットがあるだけではなく、本業への貢献につながり得ます。これが、「副業ではなく、パラレルキャリアを!」と私が声高に叫ぶ理由です。副業にイノベーション効果を期待する声もありますが、もともと内職的な意味合いのあった副業にそこまで期待するのは難しいのではないでしょうか。イノベーションへの期待は、むしろ、パラレルキャリアにあると考えます。また、現実的な視点として、副業解禁が叫ばれている現在(いま)でも、労務管理上の問題などで副業禁止の企業が多くあります。収入が発生しない学びや社会貢献タイプのパラレルキャリアであれば、労務管理・給与管理上の問題も副業より限定的といえます。「副業解禁」という言葉に飛びついて、副業に走るのではなく、未来のことをしっかりと考えたうえで、個人はパラレルキャリアの実践を、組織はその推進を行うことをお勧めします。