“複業”で人と組織を成長させる会社の“たった1つのルール”とは?

2022年7月に改定された厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の冒頭では、副業・兼業を希望するビジネスパーソンが増加傾向にあり、就業理由や形態がさまざまに広がっていることが記されている。副業・兼業の位置付けに腐心している企業も多いだろう。株式会社エンファクトリー(東京都渋谷区)は、「副業」を「複業」と定義し、社員の副業・兼業を推奨する企業として知られている。「複業留学」という新たな事業もスタートさせた同社CEOの加藤健太さんに、人と組織を高める「複業」の取り組みについて伺うとともに、「複業」がもたらす人と組織の新たな関係について語ってもらった。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)

一人ひとりが「生きる力」を高めていくために……

「専業禁止!!」を掲げ、社員の副業を禁止するどころか、むしろ、社を挙げて応援している会社がある。オンラインのショッピングサイト運営や専門家やフリーランスのマッチングサービスなどを手がける株式会社エンファクトリー(以下、エンファクトリー)だ。同社では、社員の副業を推奨しており、現在、およそ半数の社員が副業を行っている。副業の職種は、ECサイト運営、キャリアカウンセリング、メディア運営ライター、WEBデザイン、プログラミング、バンド演奏、地域NPO運営、IT企業顧問、カメラマン……など。なかには、とても副業とは思えないような専門的な仕事を行い、本業を上回る収入を得ているケースもあるという。なぜ、エンファクトリーでは副業をそこまで推しているのだろうか。

加藤 一言でいえば、「やりたいことにチャレンジしたらいいんじゃない」という考えからです。2011年の創業時から「専業禁止!!」を人材ポリシーとして掲げていますが、当時は「副業禁止」が普通の時代でしたので、反対の標語をあえて掲げて、「やりたいことをやったらいい」ということを伝えたかったのです。とはいえ、副業はあくまでも選択肢の一つ。必ず副業しなければならないというわけではありません。

 エンファクトリーのコンセプトは、「生きるを、デザイン。」(以下、「生きるを、デザイン」)です。副業を積極的に推奨しているのには、事業を通じて、世の中の一人ひとりが「生きるを、デザイン」できる社会を実現させるだけでなく、社員自身も「生きるを、デザイン」を実践し、自立したプロフェッショナルであってほしい、という思いがあります。そのためには、一人ひとりが「生きる力」を高めなければなりません。そこで、手段としての副業です。副業は「生きる力」を養うのに適しています。事業計画から営業、マーケティング、資金繰り、税務申告までを全て自分で行うことになりますし、経営視点が養われ、視野も広がり、お金のリテラシーも身につくという、言わば、学習機会の宝庫だからです。

“複業”で人と組織を成長させる会社の“たった1つのルール”とは?

加藤健太 Kenta KATO

株式会社エンファクトリー   代表取締役社長 CEO

リクルート経営企画マネジャーを経て、All Aboutの創業メンバーとして、財務、総務、人事、広報、営業企画など裏方周りのあらゆることを担当し、取締役兼CFOとして2005年に IPOを実現。その後、現在の株式会社エンファクトリーを分社し代表に就任。エンファクトリーでは「ローカルプレナーのための自己実現ターミナルの創造」を目指し、また、社内では「専業禁止!!」という人材ポリシーを打ち出して、関わる人々全ての「生きるを、デザイン」を応援中。