全員攻撃、全員守備
愚直なスタイルで浦和を撃破

 それは、「身の丈に合ったチーム作り」だ。

 具体的には、衰え知らずの運動量とインテンシティーの高さをベースに、前線からの激しい守備と、ボールを奪ってからのショートカウンターを何度も繰り返す。まさに「全員攻撃、全員守備」だ。

 この愚直なスタイルは、冒頭で述べたルヴァンカップ決勝で結実した。浦和の猛攻に耐え、後半に1点差に迫られながらも逃げ切ったのだ。

「ここまで来るのに時間はかかりましたが、決して華麗ではないけれども、みなさんの前で優勝を勝ち取る力をつけたと証明できたことをうれしく思っています。もちろん攻撃の時間をできるだけ長くして、得点をたくさん取るサッカーをやりたい。

 しかし、今日は特に終盤は相手に押し込まれて、いつ失点してもおかしくない状況でした。そこで勝つには相手を上回る攻撃力が必要なのか、それとも自分たちのこれまで培ってきた守備力なのか。そのなかで、守備力で勝負しようと考えました」

 決勝をこう振り返った指揮官は、福岡の歴史上で初めて迎えたタイトル獲得のチャンスで、選手だけでなくコーチングスタッフ、フロントを含めたチーム全員に投げかけた言葉を明かしている。

「いずれタイトルを取れると考えているクラブもあると思うが、そういう考え方では取れない。ここで取れなければ、何年も何年もずっと取れないままだと。来シーズン以降もタイトルを狙えるチームになるかどうかの瀬戸際にいたと思っていたなかで、今日の勝利で歴史が変わりました。クラブはさらに前進して上を目指していく。そういう方向に進める状況を非常にうれしく思っています」

 今シーズンの開幕を前に、J1リーグで8位以上、ルヴァンカップと天皇杯でベスト4以上という目標を掲げた。準決勝で敗れた天皇杯を含めて、カップ戦では公約を達成した。残されたJ1リーグは、公約達成が目前まで迫っている。

 ルヴァンカップ制覇後の初めてのJ1リーグとなった11月11日のガンバ大阪戦(2-1で勝利)。前半を0-1で折り返した福岡に同点ゴールをもたらしたのは、昨夏にガンバに断りを入れて残留した山岸だった。決勝点をたたき込んだのは、昨シーズンの「紳士協定破り」で批判を呼ぶも、その後奮起したルキアンだった。

 予算規模を含めて、自分たちよりも大きく、強く、うまい相手に「絶対にひるまない」を合言葉として歩んできた4年間。群を抜く求心力でチームを束ねる長谷部監督の下、質実剛健という言葉がぴったりと合うハードワーク軍団と化した福岡がさらなる飛躍の時を迎えようとしている。