会社から独立し、起業する「アントレプレナー(Entrepreneur)」と対比され、「イントレプレナー(Intorepreneur)」とも呼ばれる社内起業家。新規事業や新サービスの開拓など成熟化・多様化するマーケットにおいて貴重な存在となる、このイントレプレナーが、大企業で育ちにくいと言われるのはなぜか? どのようにすればイントレプレナーを育(はぐく)めるのか?――「挑戦と応援が循環する社会を創る」をミッションに成熟企業の新規事業に伴走するmichinaru株式会社の東加菜さんが、ボトムアップ型事業創造やイントレプレナーの育成の方法を語る。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)
いま、大企業で「イントレプレナー」が必要とされている
昨今、大企業の多くがマーケットの成熟化で既存事業の頭打ちに直面し、新たな事業創造に取り組む動きを見せています。ある有識者の著述によれば、中期経営計画を策定している企業(時価総額3000億円以上)の90%以上が、中期で取り組むべき重点テーマとして「新規事業」を挙げています。一方で、某民間企業が実施した調査では、自社の新規事業開発について、36.4%が「成功に至っていない」、33.0%が「どちらでもない」と回答しており、大企業における新規事業の推進は、まだ道半ばと言えるでしょう。
こういった背景から、事業を生み出すためのアイデアや素養のある人材の発掘・育成を人事戦略上の重点課題に据える企業も増えてきています。しかし、既存事業に適した人材を多く保有する大企業にとって、既存事業とは大きく異なる思考や行動特性が必要となる「事業創造人材(イントレプレナー)」の発掘・育成は、容易なことではありません。これまで、効率化・クオリティ向上、標準化など、“知の深化”という言葉に代表される事業の磨き込みに勤しんできた社員たちを、“知の探索”――つまりは、新たな事業機会の探索を行う「イントレプレナー」として覚醒させるにはどのようにしたらよいのでしょうか。
今回は、新たな事業の柱を模索する成熟企業の経営人事が、事業を牽引する人材や知の深化と知の探索を同時に推進する“両利きの組織”をどのように育てていけるのかを考えていきます。