世の中の「不」を見つけるインタビューの実施から
既存の社員を「イントレプレナー」へと覚醒させていくためのポイントの2つ目は、新たな事業アイデアを生み出すために必要な「思考フレーム」と「実践機会」を提供することです。ある枠組み(フレーム)で捉えられている物事を、その枠組みを外して、違う枠組みで見ることを「リフレーミング」と言います。既存事業とは180度異なる新規事業の物事の見方や考え方を、実践を通じて体得することで、これまで自信がなかった社員たちも自ら進んでアイデアが出せるようになる――私たち(michinaru)はさまざまな成熟企業の事業創造に伴走していくなかで、そんな嬉しい変化に数多く出合ってきました。そして、その変化の起点となるのが、事業創造の鍵となる、まだ解かれていない世の中の「不」(不足、不満、不便、不都合といった課題)を見つける「一次情報インタビュー」です。このインタビューは、インターネット上の情報ではなく、「不」を感じているであろう方々に直接インタビューをしにいくというものです。問題を抱えた方から直に話を聞き、心から解決したいと共感する “不の片鱗”に出合うことで、自らが手掛けたいと思う事業アイデアが育(はぐく)まれていきます。「百聞は一見にしかず」という言葉もあるとおり、現場に足を運び、リアルで切実な課題に触れ、社員自身の原体験や大事にしている価値観やビジョンと重なることで、彼らのwill(内発的動機)はさらに大きなものになっていきます。
既存の社員を「イントレプレナー」へと覚醒させる3つ目のポイントは、「失敗から学ぶ習慣や奨励文化の醸成」です。新規事業においては、成功・失敗という結果を評価するだけでなく、プロセスに光を当てることも重要です。一人ひとりの挑戦のプロセスに目を向け、それらを賞賛することで、挑戦や失敗から学ぶという奨励文化が少しずつ組織に根付いていきます。ある企業では、新規事業プロジェクトの期間中、「実践での失敗から学んだことを振り返る」グループミートアップを月1回設けているそうです。また、別の企業では、1on1などの仕組みを活用して新規事業に挑戦するメンバーの内省支援をしています。会社によっては、「事業を創ったことのある上層部が社内にいないので導ける人がいない」といった声もありますが、(上層部が)答えを必ずしも持っている必要はありません。正解がない新規事業の過程においては、「問題解決者」ではなく、最適解に向かって共に前に進めようとする「伴走者」の姿勢が大切です。新規事業の取り組みを行(おこな)っていない場合でも、上司やメンターは、メンバーが経験学習のサイクルを回せるようにサポートしていくことが肝心です。