マザーハウスの評価面談が2回に分かれている理由

佐宗 MH語ノートで大事にしている価値観と、評価を一致させるための「特殊なやり方」とは、どんなものですか?

山崎 評価面談を2回やるんです。1つめの面談は事前評価面談と呼んでいます。評価における最大の問題は、「みんな忙しいせいで、評価できるほど相手が見えていない」ということに尽きます。大して見えていないのに偉そうに評価を下さないといけない。そうすると、いくら「会社の価値観に沿っているかで評価します」と言っていても、最終評価では結局、予算達成度だけしか参照されない、みたいなことが起こってしまうわけです。

ここをなんとかするため、マザーハウスではまず「評価者には相手のことがしっかり見えていない」という前提を置くようにしています。だからこそ、事前評価面談では、評価される側が「自分がこの半期に何をやったか」を30分間ほどかけて全力でプレゼンするんです。上長は何もしゃべらず、そのプレゼンを聞くことに徹する。

そのうえで、2回めの評価面談では、事前評価面談の答え合わせをしていきます。このような事前ステップを入れるだけで、評価に対する納得感がまったく違ってきます。

そもそも、評価というのは「価値観をすり合わせて行くプロセス」なので、評価者が一方的に決まった基準で評価を下すというのは違うと思います。「評価される側が何を考えてアクションをしたのか」「それが会社の価値観とあっているのか」というやりとりがあっていいわけです。

佐宗 なるほど! 自分なりに「価値観に沿ってがんばった」と感じていることをまず伝え、そのあとに改めて、上長から見てどうだったかを確認するわけですね。

なぜ人事面談を2回にするだけで、評価に満足する人が増えるのか?
佐宗邦威(さそう・くにたけ)
株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー/多摩美術大学 特任准教授
東京大学法学部卒業、イリノイ工科大学デザイン研究科(Master of Design Methods)修了。P&Gマーケティング部で「ファブリーズ」「レノア」などのヒット商品を担当後、「ジレット」のブランドマネージャーを務める。その後、ソニーに入社。同クリエイティブセンターにて全社の新規事業創出プログラム立ち上げなどに携わる。ソニー退社後、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を創業。山本山、ソニー、パナソニック、オムロン、NHKエデュケーショナル、クックパッド、NTTドコモ、東急電鉄、日本サッカー協会、KINTO、ALE、クロスフィールズ、白馬村など、バラエティ豊かな企業・組織のイノベーションおよびブランディングの支援を行うほか、各社の企業理念の策定および実装に向けたプロジェクトについても実績多数。著書に最新刊『理念経営2.0』のほか、ベストセラーとなった『直感と論理をつなぐ思考法』(いずれもダイヤモンド社)などがある。