ハウス食品グループの「価値発揮のパターン」は?
永田 御社では「価値発揮のパターン」を「個か、組織か」「現在か、未来か」という2つの軸に従って、「課題解決」「課題創造」「組織運営」「組織変革」という4象限に分けて考えていると伺いました。具体的に教えていただけますか?
根耒 弊社では、担当業務の第一人者となる中堅社員(主に入社5~7年目)と管理職候補という2階層のなかから選抜した方を対象に階層別適性アセスメントを受けていただいています。このアセスメントで自身の個性的な強みを認識していただき、自分が求めるものと会社が求めるものを考慮しながら、どのような方向で適性を開発していくのか、つまり、どのようにして自分の個性を生かして価値を発揮していくのか、ということを考えていただきます。決して、社員をカテゴライズしたいわけではなく、多様な経験を持つ多様な属性の方が、様々な価値発揮のパターンで活躍することがイノベーションにつながっていくという考え方が前提にあります。
永田 4象限に分かれるとのことですが、だいたい何パーセントくらいずつに分かれるのでしょう? 偏りはありますか?
根耒 現状では、やや「現在志向」の2象限に偏っています。もちろん、4つの適性に優劣はなく、どの適性を持たれた方も等しく弊社には重要な存在ですが、“クオリティ企業に向けた変革”という視点から言えば、課題創造や組織変革の人材を育てていくことが今後の課題となっています。ただ、適性はその方が求められて使ってきた筋力のようなものなので、これまでその方が会社から何を求められて仕事をしてきたかによって生じる結果であると考えています。変革を目指すのであれば、会社が社員に求めることから変えていかなければならないでしょう。
永田 たとえば、課題解決の業務が中心だった方の希望が課題創造の業務だったら、どうしたらよいのでしょう? 本人の希望は優先されるのでしょうか?
井ノ上 本人の希望だけで決まる訳ではありませんが、上司との対話を通じて、本人が目指したい成長の方向性に向けて強化したい適性を明らかにしていただき、そのために必要な仕事経験にチャレンジしていただくことを重視しています。とりわけ、中堅社員に関しては、アセスメント受検後に受検者と上司とアセッサーの三者面談を実施して、本人の強みや弱みを改めて把握したうえで、今後のOJTの方向性などを話し合うようにしています。
永田 アセスメントの結果を受けて、上司はジョブアサインの方法を考えることもありますか? たとえば、「課題創造の方に見合う仕事をアサインしたい」と思っても、本人にフィットする仕事がいつでも現場に転がっているわけではないですよね。
根耒 たとえば、課題創造と言っても、その裏にあるコンピテンシーは多様です。そのなかのどの部分を強化して課題創造に近づいていくのかは、一本道ではありません。ですので、仕事のデザイン次第で各職場の仕事の経験を通じて課題創造につながる筋肉を鍛えることはできるはずです。もちろん、各職場任せではなく、会社からもいろいろな機会を提供しています。公募制度を使っていただくのもよいですし、ジョブポスティング制度も導入しています。
業務内容を変えずとも、鍛えるべき力を上司と相談しながら、自律的に自分の適性を開発していけるような枠組みを作っていけたらよいと思っています。