ダイバーシティを実現していく“組織風土改革”

永田 御社は、組織風土改革にも取り組まれていると伺いました。たしかに、多様性を高めるには、その土台としての組織風土が必要ですね。御社が求める組織風土とはどのようなものですか?

根耒 私たちは「多様性を受け入れ、チャレンジを後押しする組織風土」を目指しています。一人ひとりが多様性を受け入れるということは、裏を返せば、「自分自身の個性も認めてもらえて、働きがいを感じながら働ける」ということです。私たちは「働きがい」を、「働きやすさ」と「仕事のやりがい」の掛け算だと考えています。「働きやすさ」には、ワークライフバランスなど、働く時間の「量」や働く時間の「質」といった要素がありますし、「仕事のやりがい」には、たとえば成長実感が得られる仕事のデザインがなされているかとか、職場が新しいことへのチャレンジに重きを置いているかどうかといった要素があります。社員一人ひとりが働きがいを感じながら、会社が求めている変革と自分のチャレンジを掛け合わせて共に前進していける――そんな組織が理想ですね。

永田 組織風土は簡単に変わるものではないと思うのですが、御社の組織風土改革の特徴はどのような点にあるのでしょう?

根耒 組織風土とは、その組織の構成員が体験して感じていることの全体ですので、組織風土を変えるためには、一人ひとりが職場で目指す組織風土の方向性に合致した体験を積み重ねていくことが重要だと考えています。その中核となるのが、「全員参加の職場改革サイクル」です。職場を変えるために全員が職場の風土改革を自分事と捉えて活動に参加し、改革のサイクルを回していくというものです。その一方で、個人や職場の単位ではアプローチできないこともたくさんありますので、会社としても改革のサイクルを回しながら各職場を支援していきます。つまり、「全員参加での職場改革サイクル」と「会社の風土改革サイクル」を両輪で回していく、というのが私たちのアプローチ方法です。

永田 組織風土改革において、各職場はPDCAを回しているようですが、御社は「チェック」から始めるということで、「CAP-Do」と呼んでいるのですね。

根耒 「チェック」から始めることで、よりスピーディにアクションにつなげていけると考えています。この「チェック」には、職場の改革サイクルでも、会社の改革サイクルでも、「組織風土診断」という調査を取り入れています。これは、「あなたが所属している組織は、あなたからどう見えているか?」を問う調査です。職場の改革サイクルでは、全社員が自分の職場の調査結果を見て役職や雇用形態関係なく「ガチ対話」を行い、自分事としての「アクションプラン」を策定し、実行します。会社の改革サイクルでは、グループ全体の調査結果を分析して課題を特定し、施策を立案していく流れをとっています。

永田 職場の改革サイクルでは、診断結果を部署単位で戻しているそうですね。結果を見て、どのような「ガチ対話」が行われ、どのように組織改革が進んでいくのですか?

根耒 30人の部署であれば、4~5人くらいのグループごとに結果を見ながら、職場の組織風土上の強みや弱み、手を打つべきポイントなどについて「ガチ対話」をしていただきます。そして、グループごとにアクションプランを提出し、それを所属長がまとめる形が一般的です。進め方を厳密に決め過ぎず、目的やゴール、ガイドを示しつつ、各職場の主体的な工夫を大事にしていただきながら、進めていただいている状況です。ちなみに、アクションプランの提出率は現在100%です。内容の濃淡にばらつきはありますが、みんなでやると決めたことは何であれ真面目に向き合うという姿勢は、まさに“ハウスらしさ”だと思います。

永田 これまでに出てきたアクションプランで印象的なものはありますか?

根耒 スケールの大きなものでは、グループ会社のなかには、機能統合を機に組織風土診断の結果も踏まえて「改めて理念から見直して明文化しよう」という動きがありました。もう少し手をつけやすい例をお話しすると、日ごろの業務を通じてチャレンジした人・チャレンジのサポートやアシストをした人を「グッドチャレンジャー・グッドサポーター」と名づけて、そういった行動を取ってくれた人に対して日常的な感謝を伝える取り組みをしていこうというアクションもありました。良いチャレンジをした人とそれをサポートした人を、投票形式で選んで感謝のコメントを添えて称賛するという取り組みです。また、私たちの部署(人材戦略部)では、挑戦のための主体的な学びのための予算を確保して、仮に直近の担当業務に関わりのないことでも構わないので、今後のキャリア開発や挑戦のために「外部のセミナーを受けたい」という社員がいた場合、その予算で費用を補助する、という仕組みをつくりました。ただし、これには条件があって、セミナー受講の目的や内容を周囲のメンバーに相談して、3人の応援者を見つけなければなりません。月例の部会のなかで応援者にコメントを添えてもらって本人がプレゼンし、みんなの総意が得られた場合に限って予算を使うことができるのです。そして、(セミナーでの)学習が終わったら、その内容や成果をみんなにシェアします。