人事ジャーナリストの溝上憲文氏が、現役人事部長5人を直撃。人事部長が50代の年収を3割減にする衝撃のからくりを暴露。また“適所適材”人事を可能にするジョブ型のはずが、実際には役職定年が廃止されていない現実を激白。特集『どの世代が損をしたか?氷河期部長&課長の憂鬱 出世・給料・役職定年』の#4では、役職定年の実態に迫る。(人事ジャーナリスト 溝上憲文)
>>前編『人事部長5人が激白「本当は管理職を減らしたい」毎年10人超が降格するジョブ型制度の深意』はこちら
●サービス大手 人事部長Aさん(50代男性)
●食品大手 人事部長Bさん(50代男性)
●住宅大手 人事部長Cさん(50代男性)
●流通大手 人事部長Dさん(50代男性)
●IT大手 人事部長Eさん(50代男性)
役職定年の例外を一掃
2年後には氷河期世代が標的に
50代半ばになると、役職を一律に解任される役職定年が待っている。ダイヤモンド編集部の調査によると、従業員101人以上の企業の半数以上が役職定年を導入し、64%の企業が55~59歳に適用している(図1参照)。役職定年の狙いは人件費の抑制と組織の新陳代謝を図ることにある。
サービス大手のAさんは「以前は57歳で全員が役職を降りたが、現場に運用を任せた結果、57歳を過ぎても“余人をもって代え難い”といえない人まで管理職を続けるケースが増えた。しかもバブル期入社組の管理職が多いことを考えると、上が詰まっている現状に、若手や中途入社の社員の士気が下がる。やはり組織活性化のために必要だということで、3年かけて徐々に役職を解き、57歳で一律役職定年に戻した。今では57歳を過ぎても管理職を続けられるのはグループ会社のプロパーだけだ」と振り返る。
バブル期入社組は1988年から92年に入社した世代であり、管理職も多い。同社に限らず部門の運用で役職定年を決めていた食品大手のBさんも「部門に役職定年の時期を任せていては、恣意的に決めてしまう。本来の55歳に戻し、昨年から今年にかけて56歳以上の管理職を一掃した」と言う。役職定年に引っ掛かるのはバブル期入社世代だが、2年後には氷河期世代が標的になる。
役職定年で
年収が30%ダウンも
役職定年になると当然、給与も下がる。ダイヤモンド編集部の調査でも、半数近くが「11~30%」の減少幅だ(図2参照)。流通大手のDさんは「当社の役職定年は56歳だが、役職を外れると役付手当がなくなり、ボーナスが一定の割合減少する。課長は平均年収が800万円から700万円に、部長は1000万円から800万円程度に下がる」と語る。
この程度ならまだよい方だ。食品大手のBさんによると「平均的には給与とボーナスを含めて大体30%程度下がる。元課長は年収600万円弱、元部長も700万円まで下がっていく」と切実だ。
ただし、いきなり給与をカットすると生活にも響く。実は給与を減額する巧妙な仕掛けもある。住宅大手のCさんがそのからくりを明かしてくれた。
次ページでは、役職定年後の基本給を徐々に下げていく「いやらしい」手法を具体的な数字とともに詳らかにする。また、役職定年後の職場移動で受ける「悲惨」な仕打ち、適材適所の人事を可能にするはずのジョブ型制度を導入しても役職定年がなくならない理由と、人事部長の本音に迫る。