役職定年の悲哀#1Photo:ViewStock/gettyimages

目まぐるしく進化する技術にキャッチアップすることが求められるIT業界で、シニア社員はどう働いているのか。特集『中高年の給料激減!主要企業のデータ初公開!大企業の5割導入 役職定年の悲哀』(全17回)の#1では、IT業界での役職定年事情を取り上げる。役職定年とは例えば「55歳で担当部長なら年収3割減」というような、中高年向けの人事制度だ。実際、NTTグループ、ソフトバンクでは、制度が温存されていて最大で30%下がるケースもある。一方、SIer(システムインテグレーター)系のNEC、富士通では役職定年制度は廃止となったが、素直に喜べない事情もあるようだ。ヤフーのケースも併せて紹介する。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

55歳で一斉に管理職からお役御免
IT企業でいまだ残る役職定年制度

 毎年6月になると、NTTでは大量の「辞職者」がイントラネットなどで通知される。「役職定年」の対象となる社員は、新しい雇用形態などを提示され、辞職の扱いになるからだ。

 役職定年とは、一定の年齢と一定の職位に達した管理職に対して、一律で役職から外すことを指す。多くの場合で「役なし」となり部下もいなくなり、給料も下がる。本来定年とは60歳のはずだが、管理職にとってはその数年前に「お役御免」となってしまう、という制度である。

 NTTでは社員は役員でなければ55歳前後で役職定年を迎える。その時点で給料は3割ほど下がり、職場が変わる。職能ランクにより行き先は変わり、大部分が子会社に移るほか、主要取引先に出向することもある。出向先で役員になれれば給料が減らないこともあるというが、おいしいポストが空いているかどうかは運次第である。

 そして、実際にこの制度を経験したNTTOBによると、「会社から制度の内容について前々から説明を受けた記憶はない」という。NTTに限らず、取材では多くの企業のシニアが直前まで制度の詳細を知らないことが多かった。暗黙知のように受け継がれているのが、この役職定年制度なのだ。

 詳しくは8月2日配信予定の#3『「シニアの給料激減制」を大企業の7割が採用!独自アンケートで判明した“役職定年”の全貌』でも詳しく説明するが、この制度は大手企業になればなるほど採用率が高い。

 次ページではNTT内の各グループ企業、ソフトバンクなどで、シニアの給料が何歳で、どの職位で、どれくらいの額が減るのか、つまびらかにする。

 また、NECや富士通など大手SIer(システムインテグレーター)も役職定年制度を導入していたが、昨今は廃止に動いている。しかし、新制度では降格の対象がより若年化され、40代以下の社員でもかなりの緊張感を持って働くことになる。こちらも、年齢、役職名、減額の割合など具体的に詳細に見ていこう。併せてヤフーのシニア事情も紹介する。