どの世代が損をしたか?氷河期部長&課長の憂鬱 出世・給料・役職定年#5Photo by Satoru Okada

若手時代はモーレツ営業に鍛えられたが、現在は“癒やし系”営業で部下を育てるよう求められるのが、野村證券の就職氷河期世代だ。採用人数が絞られた世代だが、特に個人営業部門の役員では1995(平成7)年入社組を中心とした氷河期世代が多くを占める。特集『どの世代が損をしたか?氷河期部長&課長の憂鬱 出世・給料・役職定年』#5では、証券業界最大手における氷河期世代の出世と悲哀を描写し、幹部人事から現トップの思惑をあぶり出す。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

「週刊ダイヤモンド」2023年11月25日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

モーレツ営業が消えた野村のリテール
翻弄されてきた氷河期世代の出世頭は?

 かつては日本を代表する“モーレツ営業”会社の雄だった野村證券。特に個人営業部門では、新人時代から過酷なノルマを課せられ、朝から晩までエリア内をはいずり回り、飛び込みで顧客を開拓。休日は顧客に手渡す自己紹介文を毛筆でしたためて「巻紙」にする――。

 そんなスタイルは近年、大胆に変更された。新入社員は「コンタクトセンター」と呼ばれるコールセンターにまとめて配置され、同期の絆を育みながら、電話による既存客の掘り起こしなどからかキャリアをスタートさせる。これは、顧客のニーズを丁寧に聞き出すトレーニングの機会として重視される。

 ここで1年~1年半の経験を積んで支店に出ても、かつてのような先輩や上司による“しごき”は厳禁だ。むしろ現在の野村は、回転売買による手数料よりも、顧客の資産残高を増やすことを重視。そして、富裕層や法人オーナー向けの営業人員を拡充し、資産継承や相続といった専門性の高いアドバイスができる人材を育成しようとしている。

 そんな様変わりする社風と企業戦略に、いわゆる氷河期世代の社員は大きく翻弄されてきた。一方で個人営業を担う営業部門の役員は、氷河期世代ど真ん中の「平成7(1995)年入社組」が枢要を占めるようになった。

 彼らは出世頭として野村證券、いや野村ホールディングス(HD)の将来を担うと期待される反面、その上にいるバブル世代組、そして下にいる若手や中堅の双方から突き上げに遭うなど悲哀を感じさせるエピソードもある。営業部門の役員一覧の顔ぶれと、氷河期世代から輩出されそうな次期社長候補の実名と共に詳しく見て行こう。