越境ECでさえも、日本の物流企業は出る幕ナシ

 コロナ禍前の中国人訪日客による「爆買い」は、日本製品に対するニーズの強さを証明していた。訪日の爆買いと連動して注目を集めたのが「日中越境EC」という新たなビジネスであり、これには日本の物流企業も新たな商機を模索した。

 しかし、残念ながら日本の物流企業の新規ビジネスにはなり得なかった。都内に本社を持つ物流会社に勤務する前田康さん(仮名)は話す。

「アリババやジンドンなどが構築する巨大モールに送られる日本からの新たな物量を期待しましたが、すでに中国の物流企業が日本に乗り込んでおり、結局のところ積極的な拡大ができませんでした」

 事業化を思い立ったときには、すでに子会社に航空会社を持つ中国の民間物流企業が、日本での小口貨物の国際宅配便に参入していた。中国系の国際宅配便は最近、都内でも集配拠点を置き始めたが、荷物をかき集めるために、末端の顧客に提示する金額は郵便局が扱うEMS(国際スピード郵便)の半額以下だ。

 日本製品のニーズがありながら日本の物流企業が新市場に食い込めなかった理由はひとつではないが、前田さんは「なんでも自前でやろうとする中国資本の勢いには歯が立たない」と話す。