成績が悪い子に限って「テストよくできた!」と言いがちな理由

 そうした研究によってわかったのは、実際に成績の良い人はズレが小さく、成績の悪い人は自分の理解度や成績を過大評価するという形のズレが大きいということである。

 たとえば、心理学者ハッカーたちが大学生を対象に行った実験では、テスト成績をもとに五つのグループに分けて、本人のテスト成績の予想と実際のテスト成績とのズレを確かめている。

 その結果をみると、テスト成績の最も悪かったグループだけが実際より高い得点を予想しており、他の四つのグループは、ほぼ実際の得点に近い成績を予想していた。ここから成績がとくに悪い人たちではメタ認知がうまく機能していないことがわかる。

 より詳しくみていくと、成績が最も優秀なグループは平均して83%の成績を予想し、実際に平均して86%の成績を取っていたが、成績が最も悪いグループは平均して76%の成績を予想しながら、実際には平均して45%の成績しか取れていなかった。このように、とくに成績の悪い学生たちが、自分の成績を著しく過大評価するという形のバイアスを示すことが確認されている。その後の試験でも同じ手続きを取ったところ、成績の最も悪いグループのみが大きなバイアスを示し続けた。

 このように、とくに成績の悪い人物が大きなバイアスを示すという傾向が一貫してみられるが、まさにこれこそが、筆者が「わかったつもり症候群」と名づけたものである。「わかったつもり症候群」というのは、自分の理解度を正確にモニターすることができないため自分の現状の問題点に気づくことができず、そうした気づきの欠如が危機感の欠如を招き、その結果、何の改善策も取られず、成績の低迷が続くというものである。

 成績低迷の大きな要因のひとつとして、このようにメタ認知の欠如により「わかったつもり」になっているということがあるといってよいだろう。