「わからないところを重点的に学習」を身に付けるには

 メタ認知を学習活動に活かすには、メタ認知的モニタリングに加えて、メタ認知的コントロールが必要になる。

 メタ認知的モニタリングができていれば、それをもとにメタ認知的コントロールをすることになるが、いずれも幼いうちから自然にできるわけではない。

 心理学者の岡田涼は、小学3年生と4年生を3年間追跡調査しているが、メタ認知的コントロール力は学年と共に上昇していくことを確認している。その調査では、勉強しているときは内容がわかっているかどうかを確かめながら勉強する、勉強するときは最初に計画を立ててから始める、勉強しているときは学んだ内容を覚えているかどうかを確かめる、勉強でわからないときはやる順番を変える、などといったメタ認知的なことを心がけているかどうかを調べている。

 この調査では、厳密にいえば、メタ認知的コントロールだけでなくメタ認知的モニタリングも込みにして調べている。たとえば、どこがわからないのかをモニタリングできなければ、わからないところを重点的に学習するというメタ認知的コントロールができない。その意味では、メタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールを切り離して調べるのは難しいし、両者は絡み合って発達していくのだろう。

 いずれにしても、このような実験や調査の結果により、小学校低学年ではまだメタ認知的コントロールができないことがわかる。さらには、難しい課題により多くの時間をかけるという形の学習時間の有効な配分が、小学校中学年以降に徐々にできるようになっていくことがわかる。メタ認知的コントロールを行う能力が、小学校中学年から高学年にかけてどんどん発達していくようである。

『勉強ができる子は何が違うのか』書影『勉強ができる子は何が違うのか』(筑摩書房) 榎本博明 著

 そして、小学校6年生にもなると、メタ認知的モニタリングの結果に基づくメタ認知的コントロールを積極的に行うようになる。たとえば、わかりにくい箇所は読み直したり、重要と思われる箇所は要点をまとめたり、難しいところを読む際には速度を落としたりといった工夫をする。

 ただし、そのようなメタ認知的コントロールをする能力にも大きな個人差がある。そして、メタ認知的コントロールができる子ほど成績が良いという結果も得られている。

 こうしてみると、学習活動を有効に進めていくには、メタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールが必須であり、その両者を意識して行うことが成績の向上につながっていくと言ってよいだろう。

>>『「本を読む子は頭がいい」「家にたくさん本がある子は頭がいい」は本当?』を読む