かけがえのない人生を無駄にする
部下なし部長&部下なし課長

 実はダイヤモンドの記事(ダイヤモンド・オンラインの特集『中高年の給料激減!主要企業のデータ初公開!大企業の5割導入 役職定年の悲哀』)を読むまで、よく知りませんでした。まさか役職定年で年収が3割も減るとは。年収1000万円でも、妻が専業主婦で、東京で暮らしていたら生活はいっぱいいっぱいですよね。子どもを私立に入れていたりすると、年収700万円に下がったら、家計が回らなくなるでしょう。

橘 玲(Akira Tachibana)●作家橘 玲(Akira Tachibana)●作家
たちばな・あきら/2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『世界はなぜ地獄になるのか』(小学館新書)、『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)などがある。 illustration by Takuya Nagano

――役職定年制度は、当該企業の社員にも、存在や詳細が知られていないことが多いです。

 そもそも会社はなぜあるかというと、一人で仕事をするよりも協力した方が、効率が良くなるから。そのため会社組織には部長や課長がいて部下をまとめ、グループでプロジェクトを進めると、一人の力が何十倍にもなる――。これが会社の存在意義でしょう。

 そう考えると、役職定年後の部下なし部長や部下なし課長というのは、大きな矛盾ですよね。一人でする仕事なら自営業でやればいいだけで、そもそも会社にいる理由がない。「あの人、働いてるの?」と会社の中でばかにされながら過ごすのでは、一度しかない人生を無駄にしていると思います。

――役職定年制度は、日本的雇用慣行の機能不全を示す、一つの象徴なのかもしれません。

>>(4)に続く

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