『非正規と正社員の格差は「身分差別」役職定年は「大いなる矛盾」、橘玲氏が喝破』に続き、ベストセラー作家の橘玲氏に、行き詰まりを見せている日本の人事制度の問題点について話を聞いた。特集『どの世代が損をしたか?氷河期部長&課長の憂鬱 出世・給料・役職定年』の#19では、日本人の働き方に関して、「世界一仕事が嫌いで会社を憎み、世界一長時間労働なのに労働生産性は最も低い」と鋭く指摘。日本の人事制度が内包する残酷な現実についても、独自解説してもらった。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
世界一仕事が嫌いで会社を憎む日本人
長時間労働なのに生産性は最も低い
インタビュー(3)では、役職定年が抱える大きな矛盾点について、鋭く指摘した橘玲氏。今回はさらに突っ込んで、日本的雇用慣行が立ち行かなくなっている理由について詳しく聞いてみた。
複数の国際的な調査で明らかになっていますが、日本のサラリーマンは世界(主要先進国)の中で一番仕事が嫌いで会社を憎んでいます。ですが世界で一番長時間働いていて、それにもかかわらず労働生産性が最も低い。
米国のグーグルやネットフリックスが代表例ですが、彼らはサッカーのレアル・マドリード(スペイン)のようなドリームチームをつくることを目指しています。会社として最高のパフォーマンスを引き出すために、全ての職務にまずまずの人材ではなく、最高水準の報酬を支払って最適な人材を採用するのです。
その代わり、どんなに優れた人材であっても、会社が必要とする職務にスキルが合っていないと判断すれば、さっさと解雇されます。
――そういったドリームチームと、日本企業は伍して戦っていけるのでしょうか。
日本的雇用慣行では、ど素人チームしかつくれないでしょう。年功序列・終身雇用では、新しいプロジェクトを立ち上げる際も、外部からプロの責任者を招聘(しょうへい)するのは難しい。そうなると社内の乏しい人材プールから適任者を探すわけですが、そんな都合の良い話があるわけがなく、「不適材不適所」で混乱する現場を長時間労働で切り抜けようとして、パワハラやセクハラがまん延するのです。
――米国のドリームチームを相手に、まるで勝てる気がしません。