超富裕層シフトがうまくいけば
インバウンドで日本経済が復活する

 その前提で、私がこの問題をどう考えるかお話しします。私は「日本人には手が届かない街、東京」から再開発を始めることには日本にプラスをもたらす意義があると考えています。

 繰り返しになりますが、日本経済は30年余りの停滞を招いてしまったことで、世界の中で大きく地盤沈下を起こしています。以前の記事で書いたとおり、1人当たりGDPではアメリカやシンガポールのように世界の投資が集まる第一集団、ドイツや香港のように経済が順調な第二集団から遅れてしまい、落日の国々に混じる第三集団へと位置付けを下げてしまいました。

 これら第一集団、第二集団の国々から見て日本は安い国としてインバウンドに人気なのですが、これから先、2020年から2070年までの50年間、このままでいいとは私は思いません。今は「日本人には手が届かない街」だとしても、たとえば20年後の日本ではそれが日本人の手に届く街になっているような街づくりを構想すべきです。

 今年、首都圏の新築マンション平均価格が1億円を超えたことが話題になりました。一部の高額物件が平均価格を引き上げているとはいえ、手ごろな立地の物件でもパワーカップルでもなかなかローンが組みづらい価格に値上がりしています。

 このままだと新築マンションは、投資目的の外国人しか買えなくなるのではないかという危機感は私も感じています。

 でも、ここがポイントなのですが、この状況から抜け出して20年後にはまた「街が手に入る価格になる」ためには経済が発展しなければだめなのです。

 じっと待っていればバブルがはじけて、マンション価格もまた手に届く価格になるという未来シナリオもあるのでしょうけれども、それはいい未来ではないのです。

 今のところ、日本経済が上向くための武器になりそうなのは三つです。イノベーション、地政学リスクから起きている工場移転、そしてインバウンドです。

 そしてインバウンドで経済を復活させるのであれば、安価なたこ焼きをたくさん売るよりも、高く売れる不動産やその上で展開される海外富裕層向けサービスからまず売り出していくべきです。

「日本の富裕層にも手に入らない街」がこれから増えていくというニュースは、それ自体は現実をつきつけられるようでやや不快なニュースかもしれません。しかし、方向としては間違っていないと私は思います。