情報を相手に提示する
効果的なタイミング

 切り札として持っている情報というのは、相手に当てるタイミングが非常に重要です。遅すぎると相手の興味関心からそれてしまう恐れがありますし、早すぎると「なぜ急にそんなことを聞くのか」と怪しまれるからです。

 私が日本に150以上あるある大使館の連絡係を務めていたときには、各国の優秀な外交官たちとコミュニケーションを取ることが仕事でした。彼らの中にもやはり人間的な弱みがあって、例えば日本人の奥さんからDV離婚問題で訴えられてる外交官がいました。

【禁断の情報術】元公安が教える「相手の弱みを握り、自在に動かす方法」メディアの情報も防諜活動に活かしていたという勝丸円覚氏 撮影:ダイヤモンド・ライフ編集部

 その外交官はその大使館の窓口であり人脈が広い人なので、「私は妻との距離感がつかめす悩んでいます」とこちらから水を向けました。そうするとその外交官も「実は今まずい状況なんだよ」と言って、離婚訴訟について相談を受けました。そこで離婚問題に強い弁護士さんを大使にばれないように紹介できますよと伝えて、あくまでも相手が私に頼る形にします。あとは、こちらの知り合いの弁護士に連絡して彼の弁護をしてもらいました。しっかり準備をして、これで信頼獲得です。

 その後の経緯に関わらず、即座に大事にならずに専門家を紹介してくれたことは、彼からすると借りですよね。その後、この大使館の大使に私が何をお願いしても、一度も断られませんでした。この外交官が動いてくれたからです。人を紹介することも情報を与えることと、まったく同義なんです。要は課題解決できる手段とそれを使うタイミングさえ心得ていれば、相手の信頼を勝ち取って、欲しい情報を得ることができるのです。

 私が外事警察出身の外交官としてアフリカ某国にいたときには、港で大量に出た押収物を日本語と韓国語と中国語に分類する作業を手伝ったりしました。韓国語と中国語は読めないけど、分類ならできます。3カ国の司法通訳を呼ぶ手間が省けて関係者もすごく喜んでいた。日本の暴力団に関係しているものは、英語にしてあげたりもしていました。この労働提供も相手の信頼を獲得するためには有効な手段となります。

 今回の記事は、情報収集術について紹介しました。まずは情報を聞き出したい相手の嗜好や弱み、課題を特定する。それらに刺さる情報を手に入れて、ちょうどいいタイミングを見計らって渡す。これを守るだけで、あなたの元に必要な情報が集まってくるだけでなく、信頼を獲得することまでできます。ぜひ、普段の仕事で活用できないか検討してみてください。
 
*次回は12月12日(火)の公開を予定しています。