ゲーム機の進化=グラフィックの進化。その結果の人件費高騰

PS5やXbox Series X|Sなど、Nintendo Switchを除く家庭用ゲーム機の最新機種における進化はより高精細なCGで、たくさんのポリゴンを表示できるという方向への進化をたどっている。Wiiリモコンや、Wii Uゲームパッド、タッチパネルといった独自UIが搭載されていないため、結果として「高性能ゲーミングPCと同等の性能を、大量生産する分、安価に販売できます」という、廉価版ゲーミングPCのようなハードとなった。つまり、ゲームのハード依存はほとんどなくなったと考えても構わない。

その一方で、進化したグラフィック性能を駆使した高精細CGをゲームに取り入れるのはいいが、その分グラフィックを作る制作チームの人件費が高騰し、損益分岐点が上がり続けている。

そうなると、利益を出すためには全世界向けに発売し、家庭用ゲーム機の普及率が比較的高い日本や北米、EUなどに向けては家庭用ゲーム機向けとPC向けの両方で展開。家庭用ゲーム機がほとんど普及していない中国や韓国などに向けてはPC向けでのみ展開するというように、両プラットフォームに向けて同時発売するという開発スタイル/販売方法を選ばざるを得ない。

PC版でゲームを発売する、ゲームメーカー側のメリット

しかもPC版であればパッケージ版を作らず、ダウンロード専売にできるため、在庫リスクや品切れというチャンスロスからも開放される。さらに言えば、家庭用ゲーム機とは違って、ゲーム開発においてWindows PCはメーカーに支払うロイヤリティがないだけでなく、パッケージ版と違って流通や小売店の利益も不要になるため、純粋に利益率が高い。

こうなると、ソフトメーカーとしては家庭用ゲーム機に固執する必要がないどころか、PCゲームも含めたマルチプラットフォーム向けの「ソフトメーカー」へと業態変更していかなければ生き残る道はない。日本経済新聞社が実施したカプコン代表取締役社長・辻本春弘氏のインタビュー記事「ゲーム売上のうち、PCゲームの比率を2022年には50%超を目指す」という発表は、ソフトメーカーが存続し続ける上では至極当然の判断であろう。

Google、Amazonが諦めた「クラウドゲーム」は新しい潮流となるか

それに拍車を掛けようとしているのが、「クラウドゲーム」だ。クラウドゲームは簡単に言えば、プレーヤーの操作はインターネットを介してサービス提供側の高性能サーバへ伝達。ゲームの実行はこのサーバ側で行われ、動作結果は動画としてプレイヤーの画面へと伝えられるというものだ。厳密に言えば操作に対して0コンマ何秒の遅延は発生するが、最近では、ネット越しでプレイしているとは思えないほど快適に遊べるようになってきた。