クラウドゲームに活路を見出していたのは何も既存のゲームメーカーだけではない。Googleも「Google Stadia」の名称で2019年より海外でサービスを展開してきた。日本ではサービスを行っていないため知名度はやや低いかもしれないが、ウェブブラウザのGoogle Chromeを使うため、サービス利用可能な端末として考えれば世界最大のプラットフォームだった。しかし、今年2月にGoogleは、Stadia用オリジナルゲームを作るために立ち上げた開発スタジオを閉鎖すると発表した。閉鎖の理由はいくつかあるのかもしれないが、最大要因は利用者が期待したほど集まらなかったのだと推察できる。

Amazonでもクラウドゲームを開発していた。Amazon Fire TVのほか、WindowsやMac用の専用アプリを用意し、将来的にはスマートフォン用アプリも配信すると2020年に予告していたが、最近は動きも止まっているようだ。おそらくはGoogle Stadiaと同様の状態に陥っていると考えられる。

こうしたハードウェア依存を脱却しつつある大きな潮流の変化で、より大きな決断を迫られているのが家庭用ゲーム機のハードメーカー、PS5のソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)とXboxのMicrosoftの2社だ。すでにSIEは「PlayStation Now」、Microsoftは「Xbox Cloud Gaming」という、前世代ハードで発売していたゲームソフトをサーバ上で動作させる、クラウドゲーミングサービスを開始している。2社は当面、ソフトウェアメーカー兼ゲームプラットフォームとしてクラウドゲームサービスの提供をサブスクリプション(サブスク)型で提供することで売上面を確保しながら、今後のゲーム専用機のあり方を模索している最中ではないだろうか。

ただし、クラウドゲーミングサービスはメーカーにとっていい話ばかりではない。再生機はもはやゲーム機である必要すらなくなる。ライバルのハードウェアはもちろん、数世代前のスマートフォンやタブレットでも動画くらいはスムーズに再生できるので、もはやゲーム専用機が存在意義を問われつつあると言っても過言ではない。このサービスを提供することが、ゲーム専用機の寿命を縮めかねないというリスクもはらんでいるのが非常に難しいところだろう。

唯一無二のポジションを得たSwitchと任天堂

一方で、こうした動きとは無縁のゲーム機メーカーがある。ご存じ、任天堂だ。任天堂はNitendo Switchという、携帯ゲーム機兼据え置き機という唯一無二の特性があるために、他ハードとの競争に巻き込まれず、独自の市場を確保できている。