渡邊氏によると“ウェブ接客”機能を持つサービスやチャットボットなどと比較されることもあるが、Quickerとしてはあくまで「B2B企業のセールスや顧客とのコミュニケーションの体験」に注力し、機能を拡充する方針だ。

Quickerのようなプロダクトは、海外では「Conversational Marketing(Sales)」領域として複数のサービスが存在している状況だ。Conversational Marketing(Sales)とは“会話”を通じて顧客との関係性を構築するマーケティングや営業の手法のこと。それを後押しする企業としてはユニコーンのDriftが代表格で、海外ではこうしたスタートアップが手がけるサービスを自社サイトで活用する例も増えているという。 

日本においてはまだプレーヤーが少なく、9secondsとしてもまずは国内で事業を広げていく計画。そのための資金として、ジャフコグループとXTech VenturesからプレシリーズAラウンドにて総額3.2億円の資金調達も実施した。

海外のセールスマーケティング領域の主要なプレイヤー
海外のセールスマーケティング領域の主要なプレイヤー。QuickerはConversational Marketing(Sales)領域のサービスだ。

電話営業に感じた課題感がきっかけ、営業の負の解決目指す

渡邊氏は2020年の起業当初から、自身もなじみが深い営業領域の課題を解決するべくセールステック領域でプロダクトを開発してきた。もっとも、最初からQuickerのアイデアがあったわけではなく、複数のアイデアを検証し、何度かピボットした上で行き着いたのがQuickerだったという。

9seconds代表取締役CEOの渡邊将太氏
9seconds代表取締役CEOの渡邊将太氏

転機となったのは、以前試作していたプロダクトの広告をFacebook上で出したことだ。

その広告を見た見込み顧客から問い合わせがきたが、コロナの影響もあってか「(興味を持ってくれたはずなのに)すぐ対応しても、電話をかけてみるとつながらない」ということが何度かあった。「これって大きなペインだな」渡邊氏自身の課題感がQuickerにつながった。

「思い返せば以前勤めていた会社でも、問い合わせに対応したものの反応がこないということが一定数ありました。一方で海外のサイトでは従来の問い合わせフォームなどの代わりにDriftのようなサービスが使われ始めている光景を見て、このような仕組みが日本でも作れればニーズがあると感じてQuickerを作り始めました」

「日本の営業の領域はまだまだ負が大きいです。電話営業は事業を伸ばす手段の1つとして重要ではあるものの、(担当者の)心理的な負担や、電話を受ける側の体験の悪さは何十年も変わっていないと思っています。その体験を大きく変えていくことを目指していきます」(渡邊氏)