薬局・薬剤師 サバイバルダンス#2Photo:123RF

国内ドラッグストア2位のツルハホールディングスを巡る買収劇では、伊藤忠商事が買い手候補の一つだったとされる。この業界で勝負をしたければ、確かに絶好のチャンスだった。では財閥系総合商社である三菱商事、三井物産、住友商事の3社は業界再編においてどう立ち回るのか。特集『薬局・薬剤師 サバイバルダンス』(全24回)の#2では、再編における総合商社の動向を詳らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

米3位ドラッグストアが破産
多角化に遅れ、顧客は奪われた

 香港投資ファンドでアクティビストのオアシス・マネジメントが株を大量保有してゴングが鳴った、ドラッグストア業界2位ツルハホールディングス(HD)を巡る争奪戦。最終的にはオアシスから保有株を取得したイオンの下で子会社で業界1位のウエルシアホールディングスとツルハHDが経営統合することになったが、争奪戦の中で伊藤忠商事が名乗りを挙げていたと漏れ伝わったことで薬局・ドラッグストア業界に希望の光が差した。

 米国では昨秋、同国ドラッグストア業界3位の米ライト・エイドが日本の民事再生法に当たる連邦破産法第11条の適用を申請し、経営破綻した。日本の市場は成熟期の寡占化の入り口に立ったばかりだが、すでに寡占化された米国で生き残った1社が、このありさまである。

 オピオイド鎮痛薬の処方を巡る多額の訴訟費用が破綻要因の一つではあるが、それを抜きにしても買収を繰り返して規模を拡大した結果、財務が悪化し、大量の店舗閉鎖に追い込まれていた。業界1位の米CVSヘルスや2位の米ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスが調剤や医薬品販売以外に診療などヘルスケア関連で多様なビジネスを展開しているのに対して多角化が遅れ、調剤や医薬品販売でスーパー大手やネット通販などに顧客を奪われた。

 米国に学べば、単純な小売りビジネスを拡大するよりも、ヘルスケア周りのサービスを深化させていくのが薬局の生き残る道となる。そして行き詰まったライト・エイドを反面教師にすると、ヘルスケアビジネスを幅広く手掛けている総合商社は再編の買い手として価値が高い。

 しかし当の総合商社はヘルスケア分野への投資を重ねていながらも近年、薬局・ドラッグストアに対する投資意欲が薄い。そんな中で冒頭のように伊藤忠の名が上がったわけだ。では財閥系の三菱商事、三井物産、住友商事はどうなのか。

 次ページでは、薬局・ドラッグストア市場に対し3社が撤退モードなのか積極モードなのかを詳らかにする。