悪い物価上昇? 今さら聞けない経済用語「スタグフレーション」とは何か

欧米と比べれば日本の消費者物価指数は前年同月比プラス2.5%と低いようには見えるが、日本にとっては消費増税の影響を除けば1991年12月以来の高水準ということになる。

私たちが日常生活の中で実感している「あらゆるモノの値段が上がっている」という感覚と齟齬(そご)はないだろう。これから先、気になるのは日本でも欧米のような物価上昇率が実現するのかということだ。

最近よく耳にする「スタグフレーション」って何?

このような状況下で耳にする機会が増えたのが「スタグフレーション」という言葉である。スタグフレーションという言葉は経済の停滞を意味する「スタグネーション」と物価が継続的に上昇する「インフレーション(いわゆるインフレ)」を組み合わせた造語である。

国内の景気がよく、企業も増収増益、私たちの賃金も上昇している中で、国内における需要が旺盛で供給が追い付かないと、物価は上昇していく。このようなインフレを「ディマンドプルインフレ」といい、一般的には“良いインフレ”と呼ぶ。一方で、旺盛な需要が物価を押し上げるのではなく、海外から輸入している食料やエネルギーの価格が上昇し、そのコスト増を企業が価格転嫁することで起こるインフレを「コストプッシュインフレ」という。

それでは今の日本の物価状況は何と呼ぶべきなのだろうか。2020年、内閣府は2012年12月から始まった景気拡大が2018年10月に終わり、翌月から後退局面に入ったと認定した。しかし景気後退の開始から1年も経たずに消費増税をし、その後2年以上にわたるコロナ禍、そしてロシアのウクライナ侵攻と悪材料が相次いでいる。

つまり日本の景気はとても良いとは言えない。そのような中で、食料やエネルギー価格が上昇することで物価だけが上がっているわけだから、この状況はスタグフレーションそのものであると言える。それゆえに私たちがこの言葉を耳にする機会が増えたのである。

「悪い円安論」が引き起こすこと

スタグフレーションとあわせて、よく耳にする機会が増えた表現に「悪い円安」という言葉がある。一般的に円安が進行すると海外から輸入する値段が上がると言われている。分かりやすい例を挙げれば、1ドル=100円が1ドル=200円になれば円安ということになるが、海外から1ドルのモノを仕入れた際に、円換算すると100円が200円となると考えれば容易に理解できるだろう。

ただでさえ、食料やエネルギーの多くを海外からの輸入に頼っている日本にとって、昨今の食料やエネルギー価格の上昇はそのまま国内のインフレ圧力に大きく反映されるために、家計を圧迫する。そこに、さらに円安による物価上昇圧力が加わるからこそ、円安が敵視されているのだろう。