LayerX代表取締役CEOの福島良典氏によると、プロダクトの拡充が進む一方で「自動化ができておらず、唯一パーツとして足りていなかった」のが支払(決済)の領域だ。法人カードはクラウド会計ソフトとの連携などによって会計業務の効率化や担当者の負担の削減を見込める部分も多く、バクラクシリーズの既存ユーザーからのニーズが高かったこともあり、参入を決めた。

新興法人カードは“与信額の大きさ”が注目を集めるポイントの1つになってはいるものの、LayerXがバクラクユーザーにヒアリングをした限りでは「業務全体の効率化につながるのかどうか」など現場における使い勝手の良さを求める声も多かったという。そういった点も踏まえて「法人カードというよりは、法人カード周りのSaaSを作るようなイメージを持っています」と福島氏は話す。

実際、冒頭で触れた通りBrexやRampといった企業はもはや「法人カードの会社」ではなくなっている。「米国などではBusiness Spend Management(BSM)領域をいかに効率化していけるかが軸になっており、そのパーツの1つとして法人カードが存在するといったように立ち位置が変わってきている」というのが福島氏の考えだ。

特に日本においては、米国などと比べてもBtoB決済におけるデジタル化が進んでいない。2021年9月にビザ・ワールドワイド・ジャパンが発表したレポート「中小企業の事業間決済におけるキャッシュレス化・デジタル化推進」によると、中小企業の支払額におけるカード決済のシェアは全体の1%のみ。米国の26%と比べても大きな差がある。

今後この市場自体は伸びていくことが予想されるためLayerXとしても法人カードサービスを立ち上げるが、日本ではその手前の稟議やワークフローといった業務により多くの課題があると考え、同社としては「(法人支出管理という大きな山を)SaaSから登る」道を選んだ。

最終的に各社のプロダクトのラインアップが似通っていく可能性はあるが、米国を見てもデカコーンやユニコーンクラスの企業が複数存在する状況だ。

「(海外市場の動向などを踏まえても)デカコーンクラスの企業が複数社成り立つような領域であり、1社だけが勝つような領域ではありません。日本でも10社くらいユニコーンが生まれてもおかしくない市場だと考えていて、各社がそれぞれの価値を出しながら、自分たちの経済圏を作っていくのではないでしょうか。自分たちにとっては(同業他社よりも)紙や既存のアナログな業務が一番の代替手段だと思っています」(福島氏)