領域としてはインターネット領域全般に加え、2016年から取り組んできたディープテックを中心とした研究開発型スタートアップへの投資を強化する方針。ダイバーシティ&インクルージョンを推進する取り組みの一環として進めてきた女性起業家への投資の強化も継続していく。

また“スタートアップの集積地”として東京・渋谷と本郷で展開しているインキュベーション施設をひとつにまとめ、2023年上旬に新施設をオープンする。ANRIによると場所は六本木ヒルズ森タワーを予定しており、床面積は1200平方メートルを計画しているとのこと。VC主導で運営するインキュベーション施設としては国内でも最大級の規模になるという。

4号ファンドを通じて見えてきた3つの大きなムーブメント

ANRIでは2012年に立ち上げた1号ファンドから一貫して創業初期のスタートアップへの投資に注力し、4号ファンドやグリーンファンドまでを含めて累計で約387億円を運用してきた。2022年には投資先の数が200社を突破しており、現在は約220社まで広がっている。

約10年にわたってスタートアップ投資に取り組んできた中で、特に4号ファンドの運用を通じて「今後の大きなムーブメントになる」と佐俣氏が感じた変化が3つあるという。

キーワードは「シリアル(連続)起業家」「大企業からのカーブアウト」「エグゼクティブ層の起業家による大型調達」だ。

最初の連続起業家については2010年から2014年あたりにかけてインターネット領域で起業をした人たちが、M&Aや上場を経て新たなチャレンジを始めるケースが増えている。

実際にANRIでもグノシー創業者の福島良典氏が立ち上げたLayerX、Loco Partners創業者の篠塚孝哉氏が代表を務める令和トラベル、アラタナ創業者の濱渦伸次氏が立ち上げたNOT A HOTELなどに投資を実行。ANRIの投資先で先日20億円を調達したスマートバンクも、Fablic創業者の堀井翔太氏たちが新たに立ち上げたスタートアップだ。

「メルカリ創業者の山田進太郎さんなどの存在も大きいと考えています。山田さんの場合も(起業からM&Aまでのプロセスを)一度経験した次のチャレンジとして立ち上げたのがメルカリでした。そんな(シリアルアントレプレナーの)ストーリーもありえると多くの起業家が信じられるようになった1つの理由だと思いますし、日本から時価総額1000億〜2000億円規模の会社を狙っていく上では可能性のあるやり方だと感じています」(佐俣氏)