カインズが運営する「Cainz DIY Square」。同コミュニティでは8000件以上のDIY作品が投稿されており、DIY好きのユーザー同士が交流する場所になっている
カインズが運営する「Cainz DIY Square」。同コミュニティでは8000件以上のDIY作品が投稿されており、DIY好きのユーザー同士が交流する場所になっている

同社の場合はカインズのユーザーIDとcoorum上の行動データをひもづけることで、ワークショップへの参加を中心とした“DIYを楽しむ空間の提供”が、LTVを含むエンゲージメント向上に寄与するとわかった。

ワークショップでDIYの方法を学んだユーザーが、実践した様子をオンラインコミュニティに投稿する。実際にコミュニティで体験をシェアすると他のユーザーからも反応があるので、1人でやるよりも楽しくなり、どんどん続いていく──。

こうしたある種1つの“勝ちパターン”を特定できたことで、店内でのポップアップやメールマガジンなどとも連動しながら、ファンを増やすためのPDCAを回しているという。

コミュニティ内でのユーザーの行動を細かく管理できるタイムライン機能
コミュニティ内でのユーザーの行動を細かく管理できるタイムライン機能

コロナでデジタル顧客接点のニーズが増加、ファーストパーティデータの需要も

coorumはミニマムで月額25万円から使えるサービスで、具体的な料金はコミュニティに参加する人数や機能、サポートの内容などによって異なる。基本的にはエンタープライズ企業の顧客が中心。月額数百万円規模でcoorumをフル活用している企業もいるそうだ。

現在はBtoCの顧客とBtoBの顧客がだいたい半分ずつほどだが、直近で特にニーズが増えているのが小売や飲食などのBtoC事業者。中でもカインズや松屋を筆頭に実店舗を構える企業からの引き合いが増えているという。

「コロナの影響で来店が減っており顧客との接点も薄れている状況下で、新たにデジタル上の接点を作り、そこから実店舗へ誘導したいというニーズが強いです。コミュニティの設計を柔軟にカスタマイズできて、顧客接点を一元化できる。その上でデータを分析しながらPDCAを回せる仕組みはほとんどありませんでした。よく比較対象になるのは自社で作るという選択肢ですが、その場合は膨大な費用がかかるため、coorumを選んでいただくことが多いです」(今田氏)

また今田氏によるとサードパーティーCookieへの規制などプライバシー保護にまつわる状況が変化する中で、先進的にマーケティングに取り組んでいる企業を中心に「ファーストパーティデータをしっかりと溜め込んだ上で活用したい」という要望が増してきている。

そのような観点からも、自社専用のコミュニティを通じて顧客の行動履歴を一元管理できる仕組みが求められるようになっているそうだ。

近年はファーストパーティーデータへの需要も高まっているという
近年はファーストパーティーデータへの需要も高まっているという

直近1年ほどでは導入企業の拡大とともに、coorumが明確な売上の向上につながる事例も出てきた。ある大手小売店ではコミュニティに参加したユーザーの来店回数が3倍以上、購入金額も約4倍に増えた。ユーザーの平均利用単価が上がることで、全体の売上においても8000万円程度のインパクトを与える事例も生まれてきている。