ジョイントベンチャー設立の背景にあった危機感

2015年12月に軽貨物×ラストワンマイルの配送に注力したマッチングプラットフォームとしてスタートしたハコベルは、事業の成長とともに「一般貨物領域への拡張」「SaaS事業の立ち上げ」といったかたちで対象領域を広げてきた。

もっとも、事業部長としてハコベルに携わってきた狭間氏は「業界のインフラ」となるようなサービスを目指す上で、課題も感じていたという。

「継続率や拡張率を見ても一度使っていただいた方々には満足いただけている手応えがあるのですが、その一方で新規顧客の獲得の大変さを感じていました。サービスの規模感としても、産業のインフラと言えるような状態にはまだ遠い。このまま自分たちだけでやっていては、ものすごく時間がかかってしまうという危機感もありました」(狭間氏)

特にハコベルコネクトについては大手企業の顧客が中心で、“配車業務”という物流の根幹に関わるサービスであることから、事業に与えるインパクトも大きい。だからこそ従来の業務オペレーションをいきなり抜本的に変えることは難しく、段階的に導入が進んでいくことがほとんどだという。

結果としてリードタイムが長くなりやすく、本格的な導入に至るまでに数カ月から数年の時間を要するケースも珍しくない。そのため「一度使ってもらえれば継続率や拡張率が高いものの、新規顧客の獲得に時間がかかる」状態だった。

さらなる成長を目指すために、全国に点在する見込み客の開拓なども含めてすべてを自社でやるべきなのか。年明けからパートナー企業との連携の可能性も含めた議論が活発化する中で、最終的にはセイノーHDとタッグを組むことを決断したという。

「軽貨物×ラストワンマイル」からスタート、BtoBの緊急配送に強み

ハコベルイメージ
 

これまでハコベルでは「多重下請け構造」と「アナログな業務による非生産性」という2つの観点から、物流業界における“非効率”の解消に取り組んできた。

日本に約6万社存在すると言われる運送会社のうち9割は、保有車両が30台未満の小規模事業者が占める。相対取引が中心で情報の非対称性が生まれやすく、受発注自体もアナログな手法が主流だ。このような構造はラクスルが最初に事業に取り組んだ「印刷業界」とも共通する。

デジタル化が進んでいないのは社内の業務も同様で、電話やFAXでのやりとりやホワイトボードを用いた業務管理など、テクノロジーを活用することで効率化を図れる余地が大きい。

そんな業界の状況を変えるべく、ラクスルでは2015年12月にハコベルを立ち上げた。