テクノロジーのライフサイクルのステージの特性上そういうものだと思うのですが、今まではWeb3は、「ブロックチェーンを使ったらこれができる、Web3だったらこれができる」とテクノロジーセントリック(中心)で語られることが多くありました。それがいよいよステージが変わって「ユーザーにとって何が嬉しいのか」ということが議論される局面になっていると思っています。いわば「ユーザーセントリック」に変わる時期が来ていると思っています。

ハイプ・カーブ(ガートナーが提唱する技術の成熟度や社会適用度を示す「ハイプ・サイクル」における曲線のこと)の1つめのピーク(流行期:Peak of Inflated Expectations)が過ぎて、いよいよ普及の時期に差し掛かったということだと思っています。

そもそも普及の時期にならないと、何億人が使うようなサービス──それこそ私の母が、「Web3のアプリケーションかどうかすら意識せず、ただ良いサービスだから使う」というようなもの──が生まれないと思っています。今がまさに「その時」なのではないでしょうか。

渡辺さんは、Web3のコミュニティの“ど真ん中”にいるはずなのに、一方でWeb3的ではないものを否定することはしません。Web3で社会に価値を生み出す、イノベーションを起こすという意味での「リアリスト」だと思っています。その発想をうかがっていて、VCとして一緒にアクションをしやすいのではないかと思っています。

Web3を一歩引いてインターネットのコンシューマー(個人)向けサービスという視点で見たときに、「ブロックチェーンという新しい技術が出てきている。その技術は面白い機能を実現できる、その機能を色々なユースケースに当てはめていったら、今までなかったような面白いサービスが作れたり、今までのサービスが出していたようなユーザー価値を大きく増幅したりできる」と感じています。正真性の担保、トレーサビリティ(追跡性)やインターオペラビリティ(相互運用性)をはじめとして、ブロックチェーンだから実現できる機能が多くあります。

ただ最終的に最も大事なのは、ユーザーにとって何が嬉しいのかということです。Web2と比べてWeb3にどんな価値や利便性があるのか、そしてそれをフリクションレス、つまり摩擦や違和感がなく届けることができるのか。その話を置き去りにしてはいけません。テクノロジーアウトな視点とマーケットインの視点を合わせていくことがとても大事なのではないかと思っています。