ネットワークレイヤーだけでも、アプリケーションレイヤーだけでも、世界には勝てない

──お2人からもWeb3とWeb2のコミュニティの対立に関する話がありました。これについては、今もSNSなどでも取りざたされています。

高宮:ブロックチェーンというのは新しい技術なので、Web3ネイティブの人たちの方が技術や文化に対する理解はあります。一方で昔からスタートアップに関わってるWeb2の人たちの方が、スタートアップの経営に対する知見があったりします。今の状況は、お互いがお互いに不得意な部分の「車輪の再発明」を議論している状態だと感じることもあります。それならば、両者が一緒にチームを組んだ方がいいのではないでしょうか。そうしないと日本の産業としての競争力を失います。

実は米国を見るとWeb3とWeb2のコミュニティは分断されていません。Web2の中心だった人たちがWeb3に移行していて、結局はWeb3においても“ど真ん中”にいるとも言えます。「Web3とWeb2の人材の流動性」みたいな話を議論する前から、勝手に流動している状況です。日本でもそこはすぐにやっていかないといけないと思っています。

エコシステム的な考え方をすれば、(アプリケーションの)下のレイヤー、つまりネットワークレイヤーの人たちだけで世界の市場で勝てるわけでもないです。逆にアプリケーションレイヤーの人たちだけでも世界で勝てるわけはありません。

昔で言えば、グリーのソーシャルゲームのプラットフォームがあって、そこには(ゲームデベロッパーとしての)グリーというファーストパーティーがいて、(ゲーム開発会社の)セカンドパーティーやサードパーティーがいるという全体のエコシステムがあって、初めて「競争力がある」と言える状況でした。もちろんWeb3とソーシャルゲームではプラットフォームの持つ機能の違いはあるのですが、いずれにせよ「エコシステム全体としての競争力」が重要だと思っています。

プラットフォームレイヤー、プロトコルレイヤーが負けてしまうと、その上に乗るアプリレイヤーの人たちも不利になります。(Web2における)Appleの上に乗る小作人のようになってしまうわけです。ダイナミックなグローバルのプラットフォームとエコシステムの戦争が始まると言っても過言ではありません。

ですから、オールジャパンとまで言わずとも、少なくとも日本のスタートアップが世界に繋がるチャネルにアクセスできるようにプラットフォームを確保しないと、今後日本のスタートアップエコシステムとして苦しくなるのではないでしょうか。