最近話題になった「STEPN」というアプリがあります。あのアプリは偉大でした。もちろんお小遣いも稼げるかもしれませんし、彼らがどこまでそのメッセージを明確に打ち出せているかは分からないですが、それでも「歩いて健康になれる」という、ユーザーに対して“刺さる”価値の提案をしました。それをユーザーに届けやすくするためにお小遣い稼ぎの要素がついたと思いませんか? その結果、より広い層にまでサービスが届きました。普通の人が「このサービスを使って何が嬉しいの」というところを作り込んでいく、そこが一番大事だという話です。

規制に対して必要要件を満たすという話もあります。渡辺さんがやっているようなガバメントリレーションは必要です。世の中のためになるように規制を変えていく。ただし駄目なものは駄目なので、そこまでのルールを決めることが大事です。

一方で決められたルールの中で戦うのが事業者です。決められたルールの中で工夫をすればいいと思います。例えばVCであれば、LPS法(投資事業有限責任組合法)でファンドを組成した場合、トークンの保有に制限があると言われます。ですが手段、やりようはあるわけです。

そういう意味では「How(どのように)」の工夫はできるので、「What(何を)」こそが大事になります。Web3が社会の大義に向き合うとか、ユーザーの生活をより良くするものになるということこそが大事だと思っています。限られたユーザーの、お小遣い稼ぎのためという以外のユースケースについての議論が進むことが一番大事だと思っています。

──Web3に関わる開発者からは「最初にヒットするのは『ゲーム』ではないか」と聞くことが少なくありません。「ゲーム×Web3」の可能性や、マスアダプションを実現する「キラーアプリ」についてどう考えていますか。

高宮:もちろん(ゲームだからといって)必然性がないところでブロックチェーン技術を使う必要はありません。一方で最近よく話しているのですが、「コンセプトがWeb3/Web2」と、「実装がWeb3/Web2」という4象限のマトリクスがあると思っています。

コンセプトも実装もWeb3となると、まだ実際にそのユースケースやサービスの具体的な姿が想像できないので、ふわっとしてしまったり、「何がうれしいのかわからない」となりがちです。例えば、メタバースに言及するときに、ずばり「メタバースとは何か?」という質問に対して明確に答えられる人はいませんし、ゲーム業界の方々とWeb3の方々でイメージするものは違うかもしれません。