とはいえ実際のところ、ブロックチェーンのDApps(分散型アプリケーション)の多くは、AWS(Amazon Web Services )やMicrosoft Azureといったクラウドの上に載っています。それについて「なんだよ、集権的なプラットフォーマーの上に載っているじゃないか」という批判もあります。ですがもし、Web2のサービスにまったく依存したくないのであれば、自分でノード(ブロックチェーンのネットワークの接点を組成するコンピューター、サーバー)を立てるという選択肢があるんですね。

資産についても言えることがあります。今、暗号資産はBinanceやbitFlyerのような取引所で管理されています。ですが、それが嫌だったら自分でハードウェア(一般的には「コールドウォレット」などと呼ばれる)を買って資産を移し、管理できるわけです。こういった考えは今までの世界では現実的ではありませんでした。札束を銀行などに預けなければ、はたしてどこに預けられるのかという話です。

高宮:1人1人のユーザーにとってみるとWeb3は「選択肢」です。そして、技術というのは極めてニュートラルなものです。それがある機能を発揮して、あるユースケースに当てはめると価値を出すということです。

小さなクリエーターエコノミーで自己実現するのも、国家戦略としてブロックチェーンをどう使うのかも、いずれもユースケースとしての「出口」だと思います。そういうさまざまな環境が共存してもいいと思います。

渡辺:(二項対立は)過激な議論で分かりやすいので、アーリーアダプターは集まりますが、マスアダプションはしません。

あとは、Web3関連用語の日本語訳が、本質を理解する障害になっている側面があります。例えば、Crypto Currencyも気付けば「暗号資産」ではなく「仮想通貨」と呼ばれがちですよね。Decentralizeも「非中央集権化」と訳されています。

この非中央集権化というコンセプトはとても重要ですが、実際に辞書で本来の意味をたどっていくと、Decentralizeとは「分散」や「非中央集権」ではなくて「分権」を意味する言葉です。決して中央集権自体を否定しているわけではないんです。

人気ゲーム「STEPN」から考える、マスアダプションのための作り込み

──日本のWeb3プレーヤーにとっての問題、課題について教えて下さい。

高宮:その答えはずばり1つ、「マスアダプション」だと思っています。

要は普通の人に向けて、ブロックチェーンテクノロジーを使ってどう価値を出していくのか、世の中を変えるのかということです。やはり、「Web3はお小遣いが稼げるよ。投機になるよ」といったことしか言えないと、それを求めるユーザーにしか刺さらないんじゃないでしょうか。